
民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説。
今回は、衛星をはじめとした宇宙機を開発製造するスタートアップ企業にフォーカス。官から民へと移りゆく宇宙開発トレンドにおいて、最も黒字化に近い企業は一体どこなのか。
資金が枯渇する前に
宇宙開発は、非常にリスクが高い事業と言える。特に宇宙機の開発では革新的な技術が必要とされるケースが多く、機材の開発は長期にわたるため、莫大な資金が不可欠となる。
そうした事情から、かつて宇宙事業は国家と国策企業などによって行われていた。しかし、2010年代に入ると欧米で宇宙の民営化が進み、2020年代からは日本でも同様の政策が推し進められている。その象徴とも言えるのが、「宇宙戦略基金」と「SBIR」だ。この2つの支援制度によって、現在国内では巨額の補助金が民間企業に供給されている。
宇宙戦略基金とは、上場企業を含むあらゆる事業体に宇宙開発への参入を促す制度であり、その総額は10年間で1兆円。2025年2月28日には同基金の第1期、総額3000億円分の採択がほぼ確定されたが、そこにはトヨタ自動車が提案する純酸素の貯蔵技術、KDDIの月~地球間通信の他、次世代宇宙システム技術研究組合による火星着陸技術の構築など、延べ52団体による施策が並ぶ。同年5月には第2期、総額3000億円分の募集が新たに開始される予定だ。