電機メーカーとして家電から宇宙まで幅広い分野で事業を展開し、電気工学、機械工学、化学などの分野を中心に約7万件の特許を保有する三菱電機。自社の技術を生かして持続可能な社会を実現し、自らも成長するため、知的財産戦略を「競争」から「共創」へとシフトすることを決断した。その具体的な取り組みについて、知財戦略のトップである曽我部靖志氏に話を聞いた。
経営戦略実現のために知財機能を本社に統合
――三菱電機は特許の保有数、出願数において国内屈指の存在として知られます。知財部門の再編成を実施したそうですが、その狙いは何ですか。
曽我部靖志氏(以下・敬称略) 当社は電機メーカーであり、ものづくりが事業の根幹であるのは昔も今も変わりありません。そのため、知財戦略として、技術的に差別化するための特許を取得して競争優位に立つことは、これまでどおり非常に重要です。また、当社の知財戦略が、最上位にある経営戦略と連動していることは言うまでもありません。
経営戦略では「サステナビリティ」を最重要課題と掲げています。メーカーは各社同様だと思いますが、製品やサービスを一方的に提供するだけでなく、お客さまに長く使っていただく中で、持続可能な社会に貢献することが求められています。
具体的には、当社のお客さまから、製品やシステムを利用いただくことで生まれるデータを収集し、当社が運用するデジタル空間に蓄積します。そのデータを分析し、システムを進化させ、新しいサービスを生み出していきます。最終的に、お客さまに新しい価値をお戻しする「循環型 デジタル・エンジニアリング」を目指しています。
この経営戦略に基づいて2022年に、当社の特許部門である知的財産センター内に知財戦略部を新設しました。その後、知財戦略部内に標準化戦略グループ、技術資産活用グループを設立して、事業部門との連携を強化しています。知財取得のテーマについても、ハードウエアだけでなくソフトウエア、AI、ビジネスモデルに関するものまで範囲を広げて取り組んでいます。