ジェイテクト 取締役社長の近藤 禎人氏(撮影:酒井俊春)

 2024年6月、トヨタグループの1社である自動車部品・軸受・工作機械の製造会社ジェイテクトの社長に、長らくトヨタの生産技術畑を歩み2020年から同社のモノづくり開発センター長を務めた近藤禎人(こんどう・よしひと)氏が就任した。社長就任から2カ月後、ジェイテクトは2030年に向けてビジネスモデルを受動型から能動型に転換するべく「ソリューションプロバイダー」への変革を打ち出した。決断の背景には何があり、今後どのような姿を目指すのか。近藤氏に聞いた。

就任直後に直面した課題が「改革の口火」に

――ジェイテクトは2030年に向けたビジョン「JTEKT Group 2030 Vision」の中で、ソリューションプロバイダーへの変革を打ち出しています。なぜこのような考えに至ったのでしょうか。

近藤禎人氏(以下敬称略) 社長に就任してからさまざまな議論を行う中で、まず着手したのが「この会社が目指す姿を一言で表すこと」でした。

 現在、ジェイテクトは2021年から2030年までの10カ年を3年、3年、4年の3期に分け、中期経営計画を進めています。2023年度までの第1期中計では、経営環境が非常に厳しい中で、前任の社長を務めた佐藤和弘が体質強化を進めてきました。こうした活動が一定の成果を生み、2024年6月から私がバトンを引き継いだのです。

 社長に就任して私が最初に直面した課題は、ジェイテクトが世の中にとってどのような会社かと聞かれた時に、一言で表せる明確な表現が見つからないことでした。確かに自動車部品や軸受(ベアリング)、工作機械という象徴的な事業があり、もちろん私も前職時代からそれらを理解しています。しかしもっと本質的に、社会におけるこの会社の価値や意義を表す一言が見つからなかったのです。