(写真左から)ジェイテクト 研究開発本部データアナリティクス研究部AI研究室プロジェクトマネージャーの大久保勇佐氏、同本部データアナリティクス研究部先端ソフトウェア研究G主席プロフェッショナルのモレヨン・マキシム氏、同本部 領域長の小野﨑徹氏(撮影:酒井俊春)

 トヨタグループ主要企業として、自動車部品や軸受、工作機械の製造を手がけるジェイテクト。同社では近年、ソフトウェア人材の育成に注力している。生産の省人化や自動化を推進すべく、Webアプリケーション開発体制を強化することが狙いだ。これを主導するのは同社の研究開発本部だ。2022年10月には同本部所属の専門組織を立ち上げ、Webアプリ開発などの教育カリキュラムを内製しているという。その具体的な取り組みについて、研究開発本部領域長の小野﨑徹氏、同本部データアナリティクス研究部先端ソフトウェア研究G主席プロフェッショナルのモレヨン・マキシム氏、同じく同本部データアナリティクス研究部AI研究室プロジェクトマネージャーの大久保勇佐氏に話を聞いた。

ソフトウェア人材の育成や採用を研究開発チームがけん引

小野﨑 徹/ジェイテクト 研究開発本部 領域長
2002年4月に入社。研究推進部に所属し、機械・自動車部品、加工現象に関するシミュレーション技術の研究開発に従事。2017年4月に解析技術研究部部長、2018年よりAI人材育成にも携わる。2022年4月に研究開発本部 部長(統括)、2023年より現職。

——育成や採用に力を入れているソフトウェア人材とは、どんな人材でしょうか。

小野﨑徹氏(以下敬称略) AIを活用したWebアプリケーションやソフトウェアを開発・活用できる人材です。将来の少子高齢化による人手不足を見据え、今のうちから生産工程のさらなる省人化と自動化を進めなければいけません。

 また、従業員への負担の大きい製品検査などもソフトウェアに置き換えて自動化していく必要があります。こうした業務改善に貢献できるWebアプリやソフトウェア開発のスキルを持つ人材を増やしていきたいと考えています。

モレヨン・マキシム/ジェイテクト 研究開発本部 データアナリティクス研究部先端ソフトウェア研究G主席プロフェッショナル
2015年4月に入社。自動運転に関するソフトウェア開発に携わり、2019年よりAI研究室に配属。WEB技術やDevOpsの必要性を感じ、WEBアプリケーションの開発に従事。2022年より現部署に所属。2023年より現職に就き、同部署のソフトウェア開発を牽引。

モレヨン・マキシム氏(以下敬称略)実際に、私たちはさまざまなWebアプリやソフトウェアを開発しています。一例が、自動車部品などの生産を自動化するためのWebアプリです。

 たとえば、駆動部品の外観検査を自動化するため、画像データベースとAIを組み合わせたWebアプリを開発しました。これまでの外観検査は、人の目で全数行われ、負荷の大きい作業でしたが、これにより従業員のストレスを軽減できたと考えています。

大久保勇佐氏(以下敬称略) 部品などの加工設備を自動化するためのWebアプリの開発も進行中です。加工設備の加工条件は、熟練者の経験に依存する部分があります。また、加工の現場は、危険な作業が伴うこともあります。この課題に対処するため、AIを活用して加工品の製造状況をリアルタイムに検知し、加工条件を自動で修正できるWebアプリの開発を考えています。

大久保 勇佐/ジェイテクト 研究開発本部 データアナリティクス研究部AI研究室プロジェクトマネージャー
2011年4月に入社。研究開発部門にて自動車部品や工作機械に関する計測技術、シミュレーション技術の研究開発に従事。2018より社内全般のデータ分析、AI開発に携わる。2019年より現部署に所属。

──ソフトウェア人材の育成や採用を活発化するため、2022年10月には研究開発本部所属の専門組織を新設しました。

小野﨑 当組織では、常に最先端のソフトウェアの研究開発情報を把握することを最重要視しています。ジェイテクトはこれまでもシステム制御などのソフトウェアを開発してきましたが、現在開発に力を入れているのはAIを活用したWebアプリやソフトウェアです。これらのツールを開発に活かし、また社内で教育を行いながら展開しています。

 採用面においても、モノづくり企業としてソフトウェアの研究開発に特化した専門組織を持つことは、優れたソフトウェア人材の獲得につながると考えています。ジェイテクトならではのEnd to Endの研究開発アプローチや、ソフトウェア研究開発への真摯な取り組みを社外にPRしていきます。