写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

「特許」には企業の過去から現在に至るまでの発明・イノベーションの歴史が記されている。いずれも専門的な情報が多く、読み解くのは容易ではない。しかし、そこには企業や事業の価値、ひいては「未来」をも予測する貴重な情報が数多く示されている。本連載では『Patent Information For Victory ~「知財」から、企業の“未来”を手に入れる!~』(楠浦崇央著/プレジデント社)から、内容の一部を抜粋・再編集。知財力に優れた国内2社の事例を元に、特許戦略の最新事情を解説する。

 本連載後半では、世界的建設機械メーカー「コマツ」の事例を取り上げる。第4回では、世の中にまだIoTという言葉がない1997年から開発がスタートしていたという建機のモニタリングシステム「Komtrax」プロジェクトを紹介する。

コマツ ①
経営を支えるIoT建機システム「Komtrax」の開発……

■ 建設機械事業の在り方を大きく変えた

 もう一社、新規事業と知財戦略について詳しく紹介したいのが、建設機械大手の株式会社小松製作所(コマツ)です。

 コマツも僕がダントツだと思う企業で、その大きな理由の一つが「Komtrax」という「IoT」システム を開発したことです。Komtraxに関する特許を読む限り、コマツも知財にかなり力を入れている企業だといえます。

 前回紹介した花王は「ヘルスケア食品」という分野を開拓した企業でしたが、コマツは「IoT」という分野を開拓した企業です。

 どちらも、その分野のパイオニアであり、また、知財に力を入れている、という点で共通するものを僕は感じています。後で詳しく説明しますが、コマツの建設機械事業はKomtraxをきっかけに大きく変わりました。

 ここでは、コマツの事業を大きく変えたKomtraxについて、現在に至るまでの経緯を特許情報を交え解説し、あわせて 、「 Komtraxの次」の一手に関する動向を紹介します。