「特許」には企業の過去から現在に至るまでの発明・イノベーションの歴史が記されている。いずれも専門的な情報が多く、読み解くのは容易ではない。しかし、そこには企業や事業の価値、ひいては「未来」をも予測する貴重な情報が数多く示されている。本連載では『Patent Information For Victory ~「知財」から、企業の“未来”を手に入れる!~』(楠浦崇央著/プレジデント社)から、内容の一部を抜粋・再編集。知財力に優れた国内2社の事例を元に、特許戦略の最新事情を解説する。
第5回では、コマツが発明した建機モニタリングシステム「Komtrax」誕生の背景について、発明者と特許内容をヒントにしながら深掘りしていく。
コマツ ②
「Komtrax」から、特許ポートフォリオを構築
■ 基本特許、重要特許、キーパーソンを読む
ここからは、特許のお話です。まずは、Komtrax誕生からの、この20年のコマツの成長と成功の歴史を、特許情報で読み解いてみましょう。
Komtraxに関してコマツが特許出願を始めたのは、僕が調べた範囲では1997年ですね。1997年に基本特許が出て、そこから、2000年前後にかけて矢継ぎ早に関連特許が出てきます。この辺のダイナミズムというか、開発や知財活動の盛り上がりもイメージしながら、解説を楽しんでいただけると嬉しいですね。
まずは、基本特許、重要特許とキーパーソンを見ていきます。これが理解できれば、Komtraxの発明の経緯やコマツの戦略が読み解けるからです。いつも通り、特許を権利情報としてだけでなく、技術や発明の歴史を示す情報として、そして、経営の狙いを読み解くための材料として、いろんな側面から同時並行で読んでいきましょう。
今からご紹介するKomtraxに関する特許分析は、2014年に行ったもので、長らく企業内発明塾で特許分析というか「特許解読」の教材として使っているものです。
受講者によれば、特許分析の方法を学ぶのに役立つだけでなく、発明や新規事業、知財戦略を考える上でとても参考になるらしく、非常に評価が高い教材です。今回は特別に、その大人気教材の一部を抜粋して紹介することにします。