企業経営において、自社ビジネスの方向性が世界の潮流と一致していることは、価値創出に欠かせない前提と言える。とりわけ経営者は、こうした潮目を読む「感度」を貪欲に上げていく必要がある。本連載では『BCGが読む経営の論点2025』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。世界有数の戦略系コンサルティングファーム「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」のコンサルタントが提示する、2025年に重要となる10のマネジメント上の論点のうち「自動車」「物流」「アクティビスト」の3つのキーワードを軸に考察していく。
第1回は、「自動車」(Chapter2:滝澤琢・込山努著)をテーマに論じる。さまざまなメディアでEV市場の減速・停滞が報じられているが、果たしてこの流れは続くのか。また、EVだけではない今後の自動車業界の大変化とは?
市場の減速はなぜ起こっているのか
ここ数年の自動車産業の大きなトレンドといえば、EVへのシフトであることに異論はないだろう。しかし、足元を見てみると、2024年に入ってからEVシフトの減速・停滞が顕在化している。
当初の見込みでは、成長は当面続くと想定されていたが、成長率の鈍化は世界的な現象となっている。特に米国では、2024年に入って鈍化が著しく、新車販売全体に占めるEV比率(1~7月)は7.3%とほぼ横ばい(図表2-1)。欧州市場は12.9%と米国に比べて率は高いが、減少傾向にある。
ただ、域内を見ると若干の違いがある。ドイツはEV購入への補助金が終了して販売台数が減ったが、ドイツ以外ではEV販売比率が増加している国もある。日本はさらに低く、新車販売のEV比率は2%以下という水準から大きな変化は見られない。