写真提供:日刊工業新聞/©Timon Schneider/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

 産業横断の戦略構想、新たなビジネスモデル創造などの重要性が高まる時代には、あらゆる業種において“創造と変革”を推進するリーダーが求められる。本連載では、世界有数の戦略コンサルティングファームA.T. カーニーの日本のメンバーが、国内19の業種における最新トレンドを分析した『A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2025』(A.T. カーニー編/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。「小売」「エネルギー」に加え、業界横断のテーマ「M&A」にフォーカスする。

 第6回も引き続き、エネルギー業界(第2章:筒井慎介・大島翼・沼田諒平著)を取り上げる。燃料市場が電力市場もたらす不確実性と、リスク対策の手段として関心が高まる「Indexation」の管理とは?

② 燃料市場の不確実性

A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2025』(日本経済新聞出版)

 上述してきた通り、エネルギーを取り巻く不確実性はますます高まってきており、電力の市場価格も予想できないものになっています。

 “火力発電事業者の視点”の中でも記述しましたが、電力の需給バランスを取る役割を担っているのが火力発電になる訳ですが、その燃料の資源価格が変動することで電力市場価格も変動することは当然のメカニズムです。

 そのため、燃料市場は電力市場の不確実性の要素の一つと捉えることもできますが、本節では燃料市場の不確実性がもたらすリスクとして考察したいと思います。

 燃料の資源価格は一般的にはグローバルの需給バランスから決まることになりますが、そのバランスを左右する要因には地政学リスクがあり、ロシア・ウクライナ紛争は記憶に新しいかと思います。このときは供給側の不安定さの懸念が高まり、日本近海における主要なLNG価格指標であるJKMは過去最高価格を記録しました。