
写真提供:共同通信社
同時多発的な地政学的リスクの高まり、米中対立、エネルギー問題…。世界を巻き込む諸問題の影響は日本にも及び、政治・経済・ビジネスにおける国内問題と絡み合って前途に立ちはだかる。本連載では、日本経済新聞社のコメンテーターや専門記者が22の論点で2025年のシナリオを予測した『これからの日本の論点 日経大予測2025』(日本経済新聞社編/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。論点を3つに絞り、企業経営にも深く関わる課題を明らかにし、未来を読み解く。
今回は、日本が取り得るエネルギー戦略を考察する。生成AIの普及による「電力需要の増大」と「電源の脱炭素」の両立をどう図るのか?
AI時代のエネルギー戦略〜 脱炭素と安定供給両立の難路

■ AIが突きつける電力需要増大の危機
政府は「エネルギー基本計画」の見直しを進めている。エネルギー基本計画とはエネルギー政策の中長期指針であり、約3年ごとに見直す。
第7次となる新たな計画は、脱炭素に向けた高い野心とその実現への道筋を示し、国際情勢の変化に対応したエネルギー・経済安全保障と安定供給に万全を期すことが求められる。加えて新しい課題として浮上するのが、電力需要急増の可能性だ。
千葉県北西部に位置する印西市は千葉ニュータウンの中核として開発が進む。この街に窓のない方形の構造物の建設が相次いでいる。各種のコンピューターやデータ通信用の機器を収容するデータセンターだ。

経済のデジタル化に伴うコンピューターやインターネットの利用や、これらの処理を支える高性能半導体の需要増が電力需要を押し上げている。