星野リゾートの星野佳路代表
写真提供:共同通信社

 同時多発的な地政学的リスクの高まり、米中対立、エネルギー問題…。世界を巻き込む諸問題の影響は日本にも及び、政治・経済・ビジネスにおける国内問題と絡み合って前途に立ちはだかる。本連載では、日本経済新聞社のコメンテーターや専門記者が22の論点で2025年のシナリオを予測した『これからの日本の論点 日経大予測2025』(日本経済新聞社編/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。論点を3つに絞り、企業経営にも深く関わる課題を明らかにし、未来を読み解く。

 今回は、進化を続ける生成AIの現状と企業によるAI活用の最前線に迫る。

カイシャ脳が企業の競争力を左右
LLMロボで自動化は新段階に

これからの日本の論点2025』(日本経済新聞出版)

■ 観光産業でも生成AIの活用が急務に

生成AI(人工知能)は観光産業を変革する4つ目の大きなチェンジだと思う。だから、ここにいち早く参入し、しっかりとフォローする。それが次の成長、競争力の維持につながる」――。

 2024年8月、グーグル・クラウド・ジャパンが横浜市で開いたAI関連イベント「Google Cloud Next Tokyo’24」の基調講演。米グーグルのサービスを使う企業を代表して登壇した星野リゾートの星野佳路代表はそう語った。

 星野氏によれば、観光産業はこれまで、①「団体旅行・周遊型」から「個人旅行・滞在型」への需要シフト、②インバウンドの台頭、③スマートフォンでの顧客獲得などIT(情報技術)の普及という3つの変化を経験した。これらに必死に対応することで星野リゾートも業界での存在感を高めてきた。星野氏が次の節目と位置づけるのが生成AIだ。

 世界中から顧客を獲得したい星野リゾートにとって、多様な言語での情報発信は欠かせない。従来、日本語以外では中国語、台湾の中国語、韓国語、英語の4言語でホームページの情報を流してきた。それで8~9割の顧客はカバーできるが、完全ではない。翻訳作業が得意で数十の言語を扱える生成AIは強力な武器になる。