理由はいくつかある。まず、EVの車体価格は下がるだろうということ。EVがガソリン車などに比べて高いのは、主にバッテリーの価格が高いからだが、それも今後、生産量が増えかつ技術開発が進むことで次第に下がることが予想される。

 また、バッテリーの中古価値を高めるビジネスモデルの構築も期待できる。EVに使用される高性能バッテリーは、中古になっても再生可能エネルギー(再エネ)で発電した電気を蓄える調整電源用など幅広い活用が想定される。こうしたビジネスモデルが構築されれば、EVの普及は加速すると考えられる。

 さらに、各国・地域の政府による普及支援も期待できる。新たな補助金の拡充や、ガソリン車など内燃エンジン車の廃止に向けた何らかのペナルティなど、行政が脱炭素に向けた取り組みを強化する限り、EV普及には追い風になる。

 一時的な停滞があっても、EV普及は着実に進行する。BCGの予測では、2030年の世界新車販売に占めるEVの比率は39%、2035年は63%。2022年に予測した数字を一部地域では下方修正したが、欧州と中国が牽引し、米国がそれに続くという構図に変わりはない(図表2-2)。

 日系OEMにとっては数年の猶予はできたものの、本質的な課題は変わっていないととらえるべきであろう。数年後に再びEV普及が加速したときに、市場で十分な競争力を持つことができるのか。中国系を含めた新興OEMに対して、製品・価格で勝つことができるのか。これは日系OEMに限らず、自動車部品のサプライヤーにとっても、依然として危機感を持って臨むべき課題である。

100年に一度の変化は他にもある

 このようにEVシフトが大きなトレンドであり課題であることに変わりはないが、実はそれと同様に自動車業界の将来に大きな影響を与える重要なトレンドがある。これを理解せずして、自動車業界のプレーヤーが中長期的に勝ち残ることはできない。EVシフト以外の重要トレンドとはどのようなものか。