■ 世界の新車市場はピークアウトへ
まず、自動車業界はこれまで100年の歴史のなかで、多少のアップダウンはあったものの基本的には右肩上がりで成長を続けてきた(図表2-3)。
しかし、私たちの予測では、いよいよピークアウトに向かうタイミングが来ている。これまで市場を牽引してきた先進国や中国の成長が停滞することが予想される。そうなると新興国市場の拡大が自動車市場全体の成長を担うことになるが、過去の先進国や中国のような急拡大は望めない。
世界の新車販売台数は現在約1億台だが、早ければ2030年代後半あたりから成長が止まり、横ばい、あるいは下落に転じる可能性があるだろう。
これまで、自動車業界は市場の成長を前提としてきた。そのため、基本的には「伸びる市場に投資する」ことが戦略として重要だった。しかし、これからはそう単純にはいかない。
EVは自動車業界における100年に一度の変化といわれるが、実は市場も100年に一度の変化を迎えているのである。市場全体のピークアウトは、いままでに経験したことがない重大な転換点となる可能性がある。
市場の成長が停滞するとともに、その中心地が大きく変わる可能性がある。これまでは、北米・欧州が中心となり、さらに近年は中国が大きく牽引する構図だった。しかしこれからは、インド、東南アジア、中南米などいわゆるグローバルサウスの成長が見込まれる。一方、他の市場は停滞、あるいは下落が予想され、現に日本では、すでに数年前から下落が始まっている。
■ OEMの勢力図が塗り変わる
この20年あまり、OEMの勢力図が大きく変わることはなかった。韓国OEMの台頭、M&A(合併・買収)や資本・業務提携を軸とした合従連衡の進行など、多少の変化はあったものの、まったく新しいプレーヤーが参入してプレゼンスを確立するということはほとんど起きなかった。
しかし、いまEVを契機にテスラや中国のBYDなど新興OEMが台頭してきている。特に中国系OEMについては、生産台数が中国国内の販売台数を上回っており、市場の飽和を示している。そのため、BYDは輸出を強化するだけでなく、タイ、トルコ、インド、ブラジルなど海外での工場建設も進めている。