グローバルの競争環境はすでに変化しはじめている。特に東南アジアは、長らく日系OEMの“裏庭”であったが、中国系OEMが攻勢を強め、その中心であるタイにおいて、BYDが新車販売市場シェアを4.5%まで伸ばしている。

 日本のOEMにとっては、競争相手がこれまでの日欧米の伝統的OEMから新興OEMへとシフトすることを意味し、まったく異なる戦い方を強いられることになるだろう。

 これはサプライヤーにとっても同様だ。長年付き合いのあった伝統的OEMの優勝劣敗が進み、さらに新興OEMが台頭することは、顧客の構造そのものが変わることを意味する。

■ ソフトウェア化で付加価値が変わる

 最近メディアでよく目にする「Software-Defined Vehicle(SDV、ソフトウェア・デファインド・ビークル)」は、ソフトウェア定義車両と訳され、車両の機能や性能がハードウェアではなくソフトウェアによって決定づけられ、更新・改良される車両である。

 これまで自動車の付加価値はエンジンや車体などハードウェアが中心だった。しかし、今後はソフトウェアへの移行が大きく進んでいくとみられる。BCGの予測では、SDV領域が今後10年で進化を続け、2030年までに自動車業界に6500億ドルの価値を生み出すとみられる。これは世界の自動車関連の市場規模の15~20%に相当する見込みだ。

■ 自動運転が進展する

 自動運転(および運転支援システム)は着実に開発・実装が進んでいる。すでにレベル3(条件付き自動運転)については市場投入が始まっており、今後の台数増加に伴いコストが下がることで、より普及が加速していくだろう。レベル4(特定条件下における完全自動運転)は技術的にはまだ実証実験の段階で、本格的な普及には時間がかかるとみられる。

 しかし、米国ではすでにレベル4の自動運転タクシー(ロボタクシー)の実証実験が開始されており、テスラも自動運転タクシー車両の発表を予定するなど、自動運転技術は着実に進化している。

<連載ラインアップ>
■第1回 2030年代後半から自動車市場はピークアウトの予測 見逃してはいけない“EVだけではない”100年に一度の大変化とは?(本稿)
■第2回 「EV普及率40~80%」「自動運転レベル3~4」を掛け合わせて予測 2040年の自動車業界を見通す3つのシナリオとは?(1月16日公開)
■第3回 2030年に物流の需給ギャップは34.1%の予測 なぜ日本の物流危機はDXだけで解決できないのか?(1月17日公開)
■第4回 味の素などが共同配送するF-LINE、伊藤忠などによるフィジカルインターネット…企業間連携と新たな物流モデルとは?(1月20日公開)
■第5回 世界で2番目にアクティビストが活発な日本 ハゲタカでない「エンゲージメントファンド」は企業価値をどう高めるか(1月21日公開)
■第6回 資本効率、ガバナンス、TSR…アクティビスト対策と企業価値向上のために経営者が手を打っておくべきこととは?(1月22日公開)

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