2024年7月に創業90周年を迎えたニッカウヰスキー。節目を機に10月には4年ぶりとなる新商品を投入し、表参道(東京)では12月までの期間限定でコンセプトバーを開店する。原酒不足解消のための樽貯蔵庫も新設するなど攻勢に打って出る。「生きるを愉しむウイスキー」という新たなキャッチフレーズを掲げる同社の成長戦略について、爲定一智(ためさだ・かずとも)社長に話を聞いた。
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国内外の消費者が抱くニッカウヰスキーの印象
──1934年の創業から90年、長い歴史で育んだニッカウヰスキーの独自価値はどんな点にあると考えていますか。
爲定一智氏(以下敬称略) われわれの商品のバックグラウンドに何があるのかと言いますと、1つは余市(北海道)や宮城峡(宮城県)を主力にした蒸溜所の土地が持つテロワール(土壌や気候などの自然環境要因)。もう1つが竹鶴政孝(ニッカ創業者)が掲げていた品質第一主義とパイオニア精神です。その裏付けとしてブレンド技術、あるいは本場のスコットランドでも珍しい、石炭の直火加熱による蒸溜技術などが挙げられます。
──技術オリエンテッドな風土が強いニッカですが、海外ではユニークでイノベーティブな企業という受け止めをされることが多いそうですね。
爲定 海外のお客さまから見ると、当社に限らずジャパニーズウイスキー全体がユニークな存在に映っているようです。
例えば、以前私が赴任していたアサヒホールディングス・オーストラリアから現地の社員を引き連れて一時帰国した際、彼らは異口同音に「日本に行くのはアドベンチャーだ」と話していました。英語圏の自分たちのカルチャーとは全く違う文化を見聞きすることになるので、日本のユニークさがそのままニッカのユニークさにもつながっている部分があるのでしょう。
また、やはり竹鶴政孝の創業ストーリーや品質へのこだわりがイノベーティブだと受け止めていただいている点は大きいと思います。
竹鶴は若くしてスコットランドでウイスキーの蒸溜技術を学び、それを日本に初めて持ち込んだことに加え、周囲の反対を押し切って竹鶴のもとに嫁いだスコットランド出身のリタ夫人とのラブストーリーもあります。こうした歴史が海外の方々にも響いているようです。
一方、日本国内では“品質のニッカ”を掲げて経営してきたこともあり、プラスのイメージとして伝統的、本格的、信頼できるといった印象をお客さまに持っていただいている半面、センスがいいとか、クールでカッコいい、ワクワクするといったイメージや評価については、残念ながらあまり高くないことがわれわれが実施したブランドイメージの調査結果で分かりました。
今後、日本も含めてグローバルでさまざまなニッカのブランディングをしていく過程で、このプラスとマイナスのギャップを埋めていきたい。どちらかと言えば、海外のお客さまがニッカに持っていただいている印象の方に寄せていきたいと考えています。