滋賀県を拠点に近畿、北陸、東海地域で総合スーパーの「アル・プラザ」や食品スーパー「フレンドマート」などを展開する平和堂。2024年4月に初公表した中期経営計画(2024~2026年度)では、30~40代の「子育てファミリー層」を重点ターゲットに据えると明言する。ドラッグストアやディスカウントショップにどう対抗して価格コンシャスな世代を獲得していくのか。平和堂の平松正嗣社長に話を聞いた。(後編/全2回)
■【前編】大手総合スーパーの苦境を横目に滋賀県基盤の平和堂が店舗を次々大規模リニューアルする狙い
■【後編】激安店に負けず「子育て世代」取り込みへ、平和堂が実践する地方チェーンならではの店作り(本稿)
競合状況が厳しくなる中、どのように対抗していくのか
──平和堂は2024年4月に初めて「中期経営計画(2024-2026年度)」を公開しました。なぜ、公開に踏み切ったのですか。
平松正嗣氏(以下敬称略) 株式市場への説明という要因ももちろんありますが、お客さまを含め、広く平和堂の目指している方向性を知っていただくきっかけになればと思いました。
中計の中で平和堂は「地域のインフラとして生活全般に関わり、“活気のある地域社会”と“豊かな暮らし”を実現する」と宣言しています。
少子高齢化と人口減という状況は進んでいくと思います。しかし、健康で長生きする人が増える(平均寿命≒健康寿命)ことや域外からの来訪者の増加が実現すれば、地域の活性化は可能だと考え、地域と共に地域社会の将来を創る(地域共創)を掲げました。
──中期経営計画では具体的な施策として、子育て世帯を重点ターゲットに据える、と宣言しています。
平松 現在、平和堂のコア顧客は50代以上のお客さまで、30~40代の子育て世帯に対して、対応が不十分であることが課題と捉えています。
この層のお客さまは次世代の消費をけん引する存在であり、各社とも獲得したいと考えていると思います。特徴は、日常生活に必要なものの価格に非常にシビアだというところにあります。当社の商圏においても、生鮮品を含めた食品販売構成比の高いドラッグストアやディスカウントスーパーが存在感を増しています。
平和堂は、特に食品において、品揃えを豊富にし、こだわり商品に力を入れてきました。しかし、日常よく使われるものへの価格対応が十分ではなく、ドラッグストアやデイスカウントスーパーに価格の点で競り負けてしまいます。
そうした中で、平和堂では30~40代が日常的に購入される商品の価格見直しや、価格訴求型のプライベート商品「くらしモア」の価格凍結や値下げなどの施策を進めてきました。
これらを踏まえ、今年度スタートした第5次中期経営計画において、子育て世代への対応を重要課題として、取組みを更に強化しています。
一方で、これまで平和堂が注力していた地域性の高い商品やこだわり商品への取り組みも、更に強化しています。産地や品質にこだわる商品の導入やこだわりの品質を謳うプライベート商品「E-WA!」、では、名産地の素材だけでなく地元の素材も活用し、品質の高い商品の開発を進めています。
平和堂が50代以上のお客さまに支持されているのも、食材にこだわった、地域の食文化を尊重した高品質の商品を常に販売していることも一因と思います。
当社の商圏では、エリアによっては、親子三世代が一緒に買い物をされることが日常的にみられるところもあります。高齢者世帯と子育て世帯の両方への訴求力を高めていくことが不可欠だと考えています。
──2023年9月には、平和堂初の小型店「フレンドマートスマート茨木サニータウン店」(大阪府・茨木市)をオープンしました。どのような狙いがあるのでしょう。