ファーストリテイリングの決算発表記者会見で、質問に答えるユニクロの塚越大介社長(2023年10月)
写真提供:共同通信社

 時価総額約15兆円、企業価値創出力No.1と、名実ともに国内企業のトップランナーに成長したユニクロ。その強力な経営スタイルは、創業者・柳井正氏のカリスマ性によるところが大きいと思われがちだが、実際にはそうしたトップダウンとは真逆のところにこそ、ユニクロが持つ最大の強みがある。本連載では『ユニクロの仕組み化』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。ユニクロを展開するファーストリテイリングの元執行役員である著者が、「仕組み化が9割」という同社の経営戦略をひもといていく。

 今回は、「大きい服を着せる」という言葉で表現される、ユニクロの人事登用制度に注目。新卒から役員まで、あえて身の丈に合わないチャレンジを課す同社の狙いを探る。

 

ユニクロの仕組み化』(SBクリエイティブ)

■ 若手を抜擢する

 ユニクロには、人事評価制度以外にもイノベーションを促す仕組みがいくつかあります。

 そのひとつが若手の抜擢です。

 ユニクロは「若い」会社です。

 事業会社ユニクロの社長の塚越大介さんは、就任が44歳でした。皆さんびっくりしているかもしれませんが、30代で執行役員に就く人も少なくありませんし、昔は20代後半で役員になる人もいました。

 柳井さんは、「人間25歳ピーク説」を唱えていました。「人は25歳になれば、どんなことに挑戦しても成果を出せる肉体的・精神的能力を備えている」という考えです。この思いはかなり強く、私は2012年に入社した段階で「2020年の成長ビジョン実現のために育成すべき200人の経営者(執行役員以上)のうち、少なくとも3割は20代後半から30代の若手」と目標を課されました。

 実際、欧米のグローバル企業の多くは40代半ばまでに最高経営責任者(CEO)に選ばれていて(たとえばGE〈ゼネラルエレクトリック〉のジャック・ウェルチ氏やジェフリー・イメルト氏は、45歳でCEOに就任)、20年スパンで経営に長期コミットすることが企業価値向上には有効という考え方もあります。

 そこから逆算して、20代後半から30代前半で抜擢して、事業責任者としての経験を積ませながら、経営のプロに育成する仕組みが確立されています。一方、日本の多くの大企業では50代、60代になってようやく社長に就任し、2期4年や6年の任期を務めるのが一般的です。