
時価総額約15兆円、企業価値創出力No.1と、名実ともに国内企業のトップランナーに成長したユニクロ。その強力な経営スタイルは、創業者・柳井正氏のカリスマ性によるところが大きいと思われがちだが、実際にはそうしたトップダウンとは真逆のところにこそ、ユニクロが持つ最大の強みがある。本連載では『ユニクロの仕組み化』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。ユニクロを展開するファーストリテイリングの元執行役員である著者が、「仕組み化が9割」という同社の経営戦略をひもといていく。
今回は、同社の次世代リーダー育成プログラムにフォーカス。「ポスト柳井氏」を見据え、過酷な試練を通じてマネジャー、若手・中堅のキャリアアップを後押しする仕組みについて紹介する。
次世代のリーダー・後継者を育成する仕組み

ユニクロは次世代のリーダー育成には以前から取り組んでいます。それは柳井さんにも強烈な危機感があるからでしょう。
「自分がいなくなってもユニクロが成長し続ける仕組み」こそ、ユニクロの「仕組み化」の最後のピースといえるからです。
そのための布石は約10年前から打っています。
■ 次世代リーダーを育成する仕組み
私が責任者を務めていたFRMICがその役割を担っていました。09年に経営幹部養成機関として設立され、今では社内教育全般を担当しています。FRMICはかなり独特の組織で従来型の社内教育機関とは、まったく異なる発想を持っています。名前の通り経営変革を通じ経営者・人材育成を図ることがミッションです。
その中で次世代経営者育成の2本の柱となる「仕組み」が、「FGL(Future Global Leader) イニシアティブ」と「MIRAIプロジェクト」という二つのプログラムでした(現在は異なるプログラムに進化)。FGLイニシアティブは、マネージャークラス(年齢による区切りはありませんが、目安は30代です)を3年間で経営者(役員あるいは上級部長グレード)に育成するためのプログラムでした。対象者はグローバルグループから各事業の経営者によって抜擢された60人程度で、女性が半分、日本人は3分の1程度の構成でした。