写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 時価総額約15兆円、企業価値創出力No.1と、名実ともに国内企業のトップランナーに成長したユニクロ。その強力な経営スタイルは、創業者・柳井正氏のカリスマ性によるところが大きいと思われがちだが、実際にはそうしたトップダウンとは真逆のところにこそ、ユニクロが持つ最大の強みがある。本連載では『ユニクロの仕組み化』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から、内容の一部を抜粋・再編集。ユニクロを展開するファーストリテイリングの元執行役員である著者が、「仕組み化が9割」という同社の経営戦略をひもといていく。

 今回は、企業にとって欠かせない「経営理念」をテーマに考える。形骸化しがちな理念を「自分事化」して実践し、生産性を高めるユニクロの仕組みとは?

 

■ 経営理念は「自分事化」する仕組みがなければ意味がない

ユニクロの仕組化』(SBクリエイティブ)

 企業には経営理念や企業理念があります。最近はパーパス経営ブームで、パーパス(存在意義)を経営理念体系に組み込んでいる企業も多いです。みなさんが知っている会社のホームページを見れば、必ず載っているはずです。

 たとえば、パナソニックでしたら「産業人たるの本分に徹し社会生活の改善と向上を図り世界文化の進展に寄与せんことを期す」、日立製作所でしたら「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」、本田技研工業(ホンダ)でしたら「人間尊重 自立、平等、信頼 三つの喜び 買う喜び、売る喜び、創る喜び」となっています。

 私がクールだと思うのは、ソニーの「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というパーパスです。

 大企業だけでなく中小企業にもあります。企業の新旧、大小を問わずあり、全ての会社にあるといっても言いすぎではありません。

 なぜかというと、経営理念は会社の存在意義と目指す方向性を確認するため、会社のベクトル合わせに最も重要な役割を果たす、いわば北極星のようなものだからです。