北海道で店舗数トップシェアのコンビニチェーン「セイコーマート」の強みはオリジナル商品だ。店内で卵をとじたカツ丼などを販売するHOTCHEF(ホットシェフ)や北海道産の原料を使ったPB(プライベートブランド)商品など、他のチェーンにはない商品が人気だ。セコマはオリジナル商品開発にあたっては「お客の声を聞かない」ことをモットーに掲げているという。なぜか?前編に続き、赤尾洋昭社長へのインタビューの模様をお届けする。(後編/全2回)
■【前編】道内シェアトップ、8年連続コンビニ顧客満足度1位…セイコーマートの強さの秘密は「大手に似せない」ビジネスモデル
■【後編】店内で調理する「ふわふわ卵のカツ丼」が人気のセイコーマート 商品開発のモットーは「お客の声を聞かない」(今回)
カツ丼の卵を「店でとじる」理由
──前編で、セコマは創業以来「競争における差別化」を重視してきたと聞きました。ホットシェフやPB商品のラインアップでは、他チェーンには見られない独自性の高い商品が並んでいます。
赤尾洋昭氏(以下敬称略) 全店の売り上げの内、たばこを除くと約5割をオリジナル商品が占めています。
ホットシェフの人気商品は、店内で卵をとじるカツ丼と店内で揚げるフライドチキン。PBでは3種類の乳脂肪分が異なる牛乳が人気で、1日あたり1店で40本お買い上げいただいています。
特徴商品は目的買いを誘引する「マグネットアイテム」になります。すでにお話しした通り、90年代まで多数存在していたコンビニチェーンは大手と同質化して、成熟期になって淘汰されたという歴史があります(前編を参照)。
大手より資本力が弱いセコマが考えていたのは、「いかにセイコーマートでしか買えない商品を販売するか」という戦略です。セコマにしかない商品があればお客様の来店頻度が上がる、来店頻度が上がれば、(買い物目的に)なかった商品もついで買いしてもらえるという好循環を生み出せています。
特にホットシェフの商品に関しては、店内で調理するわけですから、味や調理工程にも妥協しません。店内で握るおにぎりと丼モノに使うお米は店内で炊いています。日本人のお米に対する味覚は非常に敏感ですから「これは工場で炊いたものか、お店で炊いたばかりのものか」はすぐに分かってしまいます。
カツ丼も工場で卵をとじて店舗に配送していたのでは時間が経ってしまい、半熟で流通させることはできません。店内で卵を調理するからこそ、カツ丼のフワフワとした食感を出せるのです。
ホットシェフの商品を作るための店内厨房機器だけで、1店あたり約1000万円の設備投資をしています。店内調理の人件費もかかりますが、「セコマでしか買えない商品」を作るために必要なコストなのです。
PB商品を機動的に開発するには、自らの製造拠点が構築されていることが有利になります。セコマでは2000年代初頭から後継者が見つからない食品工場を買収したり、自ら農場をつくったりと食品の原料調達や製造分野に投資を積極的に行っていました。
これは、コンビニ大手との競争でいかに生き残るかを考えて対応してきたことです。原料を売る農協にしても、商品を供給する食品メーカーにしても、小売業が大手に集約されてしまうと、小規模なチェーンには売る必要がなくなってしまうという危惧を強く持っていました。
──オリジナル商品の開発に際しては「お客の声を聞かない」ことをモットーにしているそうですね。