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 人口減少により地元企業が衰退し、地方銀行の経営も厳しくなっている。借入需要が低下し、貸出が伸び悩む中、一部の地方銀行は投資信託や保険商品の販売に頼り、手数料収入を優先。その結果、地域経済とともに苦境に立たされている。

 しかし、『地方銀行ノマド』の著者・藤堂敏明氏は、地方銀行が持つ情報やネットワークを活用すれば、銀行だけでなく地域経済の活性化も可能だと指摘する。本稿では、藤堂氏が銀行員時代に取り組んだ地元経済再生のプロジェクトを基に、地方創生のヒントを探る。

地元経済活性化の実例

――地域経済を活性化させる上で、成功している地方銀行の取り組みはありますか。

藤堂敏明氏(以下、敬称略) 地方銀行は融資を通じて、さまざまな地元企業とのネットワークを持っています。こうしたネットワークを生かした成功事例としては、地域で複数の飲食店を経営している方と、有機野菜を作っている農家とのマッチング事例があります。

 飲食店を経営していた方は、地元の良い食材を使った料理をお客に提供して、喜んでいただきたいという思いを強く持っていたのですが、どこから優良な有機野菜を仕入れればよいのかが分かりませんでした。

 一方、地元で有機野菜を育てている農家の方は、地元の方たちに自分が育てた有機野菜を食べてもらいたいと思っていたものの、形が少し不ぞろいだったり、小さな傷がついていたりすると、その野菜や果物はB級品扱いになって販売価格が落ちてしまうため、なかなか流通経路に乗せられない、という悩みを抱えていました。

 確かに、流通に乗せようとするとこの手の問題に直面してしまうのですが、農家が直接、飲食店に野菜を納品できれば、一気に問題が解決します。多少不ぞろいや傷の付いた品であっても、料理に使う分には問題ありません。