
日本の人口減少が深刻化している。2056年に総人口は9965万人に減少する見込みだ。都道府県別の人口増減率では、2022~2023年の2年連続で増加を維持したのは東京都のみで、その他の地域はすべて減少している。
人口減少と地域経済の縮小により、地方銀行の収益基盤も揺らぎ、その持続可能性が問われている。こうした状況の中、地方銀行はどのようにビジネスモデルを変革すべきなのか。『地方銀行ノマド~地域ネットワーク×WEBマーケティング』(みらいパブリッシング)の著者で元地方銀行員の藤堂敏明氏に話を聞いた。
地方銀行が置かれた現状を整理する
――人口減少により地域経済が衰退する中、その中心的存在だった地方銀行のビジネスモデルは通用しない時代になったと考えられますか。
藤堂敏明氏(以下、敬称略) 地方都市は軒並み人口が大幅に減っています。それでも政令指定都市はまだ良い方ですが、それ以外の地域は、若い人たちを中心に大都市圏への人口流出が著しく、経済規模の縮小と、働き手不足にあえいでいます。
うそのような本当の話ですが、地方の小さな工場では、働いている人の半分程度が外国人というケースも少なくありません。日本人だけで地域経済を回せない状況になっていると言ってもよいでしょう。地方銀行は融資を実行する際に、常に融資先の現場をチェックするので、その辺りの危機感は相当なものがあります。
その中で地方銀行自体も、完全に負のスパイラルに入っています。地方銀行の経営が厳しいといった情報が、さまざまな媒体を通じて流れているからか、将来性のある若者で、地方銀行への就職を目指す人が減っているだけでなく、入行してくる人材の質も低下しているように感じます。
また、地方銀行の仕事は、預金で集めたお金を地元企業などに貸し出して、利ざやを稼ぐことにありますが、地元企業の数が減っているので、収益力が大きく落ち込んでいます。そのため、地域経済を盛り上げるための知恵を絞ることよりも、とにかく目先の収益を稼ぐことに集中しがちで、地方銀行の本質的な仕事である、地域経済を活性化させることに、時間やリソースが割けない状況に直面しています。
――目先の収益を稼ぐというのは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。