リクルート リクルート経営コンピタンス研究所 部長 Ring事務局 兼 新規事業開発室の宗藤和徳氏(撮影:酒井俊春)

 リクルートが1982年にスタートした新規事業提案制度「Ring(リング)」からは、「カーセンサー」「ゼクシィ」「スタディサプリ」など数々のサービスが生まれた。他社がうらやむようなその仕組みだが、事務局を統括する宗藤和徳氏は「まだ発展途上」と語る。Ringの発展と、同社の新規事業戦略を聞いた。

リクルートはなぜ新規事業開発をするのか

――リクルートの新規事業創出活動は、長い歴史を持ち、多くの実績を挙げてきました。大企業となった現在、取り組みに変化はあるのでしょうか。

宗藤 和徳/リクルート リクルート経営コンピタンス研究所 部長 Ring事務局 兼 新規事業開発室

2000年に新卒で印刷会社に入社し、広告代理店を経て、2007年にリクルートに入社。Webマーケティングの事業横断組織にてスマートデバイス対応の推進、R&D 部⾨で大手IT企業とのグローバルアライアンス推進などを歴任。また、12年にわたり、リクルート経営コンピタンス研究所を兼務し、社内のナレッジマネジメントや経営陣の意思決定を⽀援。2021年に日系アパレル企業に転職し、2023年5月にリクルートに再入社。2024年4月より現職。

宗藤和徳氏(以下・敬称略) 当社が新規事業開発を重視し、今も力を入れている理由は、事業そのものというより、「価値の源泉は人」と考えているからです。

 当社は情報産業に身を置く企業です。しかし、強い特許をたくさん保有しているわけでもありませんし、設備など物理的なアセットもありません。ですから人を中核に据えることは自然なことで、唯一の財産が人だったと言えます。

 1960年の創業以来、会社を取り巻く外部環境は常に変化してきました。まさに変化対応の60年であり、これからも変化を先取りし、変わっていかなければ生き残ることはできません。

 特に2000年以降、インターネットの時代になり、変化のスピードはさらに速くなり、複雑性も増しています。その製品、サービスを使ってくださる企業、あるいはエンドユーザーがどう感じるか、使いやすいかなどの判断が、事業存続の重要な要素になっています。

 そのため、企業がこの時代にふさわしい事業を行い、収益を上げるためには、社員一人一人がビジネストレンドなどのセンサーを持つことが不可欠です。今あるサービスに違和感を抱いたら、そこを改善する。あるいは、新しいサービスを提案するというサイクルを回していかなければ、企業全体として変化に対応していくことはできません。当社が新規事業開発の活動を企業価値の源泉と捉え、戦略的に続けている理由は、そこにあります。

出所:リクルートはなぜ、新規事業を生み続けられるのか?~新規事業起案×人材育成のメカニズム
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