リクルートが1982年にスタートした新規事業提案制度「Ring(リング)」からは、「カーセンサー」「ゼクシィ」「スタディサプリ」など数々のサービスが生まれた。他社がうらやむようなその仕組みだが、事務局を統括する宗藤和徳氏は「まだ発展途上」と語る。Ringの発展と、同社の新規事業戦略を聞いた。
リクルートはなぜ新規事業開発をするのか
――リクルートの新規事業創出活動は、長い歴史を持ち、多くの実績を挙げてきました。大企業となった現在、取り組みに変化はあるのでしょうか。
宗藤和徳氏(以下・敬称略) 当社が新規事業開発を重視し、今も力を入れている理由は、事業そのものというより、「価値の源泉は人」と考えているからです。
当社は情報産業に身を置く企業です。しかし、強い特許をたくさん保有しているわけでもありませんし、設備など物理的なアセットもありません。ですから人を中核に据えることは自然なことで、唯一の財産が人だったと言えます。
1960年の創業以来、会社を取り巻く外部環境は常に変化してきました。まさに変化対応の60年であり、これからも変化を先取りし、変わっていかなければ生き残ることはできません。
特に2000年以降、インターネットの時代になり、変化のスピードはさらに速くなり、複雑性も増しています。その製品、サービスを使ってくださる企業、あるいはエンドユーザーがどう感じるか、使いやすいかなどの判断が、事業存続の重要な要素になっています。
そのため、企業がこの時代にふさわしい事業を行い、収益を上げるためには、社員一人一人がビジネストレンドなどのセンサーを持つことが不可欠です。今あるサービスに違和感を抱いたら、そこを改善する。あるいは、新しいサービスを提案するというサイクルを回していかなければ、企業全体として変化に対応していくことはできません。当社が新規事業開発の活動を企業価値の源泉と捉え、戦略的に続けている理由は、そこにあります。