三井化学 社長補佐・新事業開発センター担当の表利彦氏(撮影:川口絋)
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「若い人たちに頑張れ、頑張れとだけ言っていてもイノベーションは起きません」と話すのは、40年間の企業人生で様々な新事業立ち上げのプロセスに携わり、現在は三井化学の新事業開発センターにおいてイノベーション推進を担当する表利彦(おもて・としひこ)氏。素材メーカーによるイノベーション実現に必要な視点とプロセスとはどのようなものだろうか。

※本稿は、2024年6月に配信されたJapan Innovation Review Forums「DX Week」における「三井化学の新事業開発センター(NBIC)の取り組み~40年の企業生活で学んだことをベースに/三井化学・新事業開発センター担当 表 利彦氏」をもとに制作しています。

未知のものを外部から取得し、イノベーションを実現する

 1983年に日東電気工業(現日東電工)に入社、その後40年間の企業人生を通じて、様々な新規事業立ち上げのプロセスに携わってきた表氏。現在は、三井化学の新事業開発センター(NBIC:New Business Incubation Center)でイノベーションの創出に携わる。
 
 表氏は、研究(Research)を「お金を使って知識を獲得する活動」、開発(Development)を「知識から得られた知恵をお金に変える活動」と定義した上で、NBICの役割を「研究結果により得られた知識をインキュベーションし、未知なものを外部から取得してお金に変えていく活動」と説明する(下図)。

 また、イノベーションプロセスの段階と三井化学の部署を整理したのが下図だ。同社では、0から1を生む部分(研究)を未来創生センターが担い、100に向けた事業立ち上げ(開発)は既存事業部や新製品開発部門が担う。その中間的な領域にあるのが、スタートアップや研究機関などの外部パートナーと協業したり投資を行うCVCやNBICというわけだ(下図・赤い部分)。

 では、こうした一連のイノベーションプロセスにおいては、どのような課題がありどのような視点が必要なのだろうか。以下では、表氏が三井化学のイノベーション創出の考え方、オープンイノベーションの進め方について語った講演の骨子をお届けする。