りそなホールディングスのDX戦略は、前任の南昌宏氏(現社長)の時代から一貫している。それは顧客体験の変革であり、「会えないお客さま」に対しても課題解決を支援し、価値提供していくというものだ。中核チャネルの「りそなグループアプリ」は、利用件数でATMを上回るまでに成長した。現在、DXとITシステム、ITセキュリティ部門の担当役員を務める野口幹夫氏に、これまでの取り組みやDX成功の鍵、「金融デジタルプラットフォーム構想」の進捗などについて聞いた。
デジタルの“攻め”と“守り”を担い、スピードアップに貢献
――りそなグループのDX推進をリードするお立場かと思いますが、改めて野口さんのミッションについて伺います。
野口幹夫氏(以下敬称略) 2020年からオムニチャネル戦略部の担当役員になり、それまでシステム部門を担当していたので、DXとITの兼務体制となりました。さらに、2022年4月からはITセキュリティ統括部も所管しています。
――DXとITシステムはビジネスの性質として相反する部分もあるかと思いますが、兼務するのは大変ではないですか。
野口 “攻め”と“守り”という意味では、DXは“攻め”、ITは“守り”だと思いますが、その両方をうまく私の方でコントロールしながら進めていくことができるというのは、スピード感という点で大きく貢献できたのではないでしょうか。
例えば、地域金融機関にバンキングアプリを提供させていただいておりますが、コラボレーションする時の相手方はシステム担当者であることが多いです。われわれは彼らの会話を理解できますし、その場で出たどんな質問にも答えられます。単にアプリ基盤を提供するだけでなく、システム面も含めて提案できることは大きな強みであり、信頼獲得にもつながっていると思います。
――りそなグループにおけるDXの目的、DXを通じて目指す姿とは、どのようなものでしょうか。
野口 お客さまの体験を変えて、新たな価値を提供していくこと。これに尽きます。そのために、今まで銀行窓口で提供してきたサービスをしっかり捉え直し、スマホの中でさまざまな取引が完結する「スマホがあなたの銀行に」という世界観を当時のチームで夢見て進めてきました。
当時は南がDXのリーダーシップを取って、私はITのリーダーシップを取り、アジャイル開発なども取り入れて、部課長クラスや若い人材も巻き込みながら、侃々諤々の議論を重ねて出来上がったのが、「りそなグループアプリ」というわけです。