ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長のシータン・キトニー氏(撮影:酒井俊春)

 個人の買い物でのキャッシュレス決済が広がりを見せる一方、企業間の取引では現金や銀行振込が依然として主流だ。約1100兆円という巨大な規模を持つ国内の企業間決済市場で、デジタル化の後れが企業の競争力や生産性向上の妨げになっている。ビザ・ワールドワイド・ジャパンのシータン・キトニー社長に、企業間決済のデジタル化がもたらす可能性と、その実現に向けた戦略を聞いた。

企業間決済市場の実態

――日本の企業間決済において、なぜ依然として紙や現金を介した従来型の決済手段が根強く残っているのでしょうか?

シータン・キトニー氏(以下・敬称略)企業間決済において「キャッシュレス」という言葉は、実態を正確に表していません。大企業や中堅企業の多くは既に銀行振込という送金システムを通じた電子決済を行っています。ただし、これらのシステムは多くの手作業を必要とします。取引に関連するデータをスムーズにやり取りできず、業務の効率化という本来の目的を達成できていないのです。

 一方、中小企業では現金決済が主流です。お客さまから受け取った現金で仕入れを行うという循環が続いています。結局のところ、法人決済のデジタル化が進まない最大の理由は、勢いがついていないことなのです。1970年代から80年代に導入したシステムや手順が今も使われており、この慣性を断ち切ることができれば、大きな変化が期待できます。ただし、日々の業務に深く根付いたこれらの仕組みを変えることは簡単ではありません。

 世界水準の先進的な取り組みを行う企業もありますが、まだそこまで至っていない企業も多いのが実情です。これらの企業がVisaの決済の仕組みを活用すれば、業務効率は大きく向上するはずです。

――企業間決済のデジタル化は、具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか?