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今では当たり前になったオンラインでの株式売買。このネット証券ビジネスは、松井証券が1998年に立ち上げたものだ。ネット証券の先駆者である松井証券の松井道太郎・戦略部門担当取締役に、証券分野でのDX活用について業界全体を俯瞰してもらった。
ライフスタイルの変化、規制緩和、フィンテックの台頭など、金融機関の経営環境は激変の一途。今やDXによる変革は待ったなしです。金融業界におけるDXキーパーソンへのインタビューにより、DX戦略の全体像から、データ活用、CX、カルチャー変革、デジタル人材育成まで、金融DXの最新の事例を取り上げます。
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ネット証券の歴史は既に20年超
――株式取引は、金融業界でもDX活用の先駆的な分野です。
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1987年生まれ。2013年、QUICKに入社。2018年、松井証券に入社し、コンプライアンス部・社長室を経て2020年に戦略部門担当取締役に就任。
松井 株式のオンライン取引は既に25年近くの歴史があります。当社も1998年に先代(道夫氏)がそれまでの対面営業からオンライン取引に切り替え、ネット証券になりました。その後、2000年代前半までに現在のSBI証券や楽天証券などのネット証券が多く勃興し、現在は個人投資家の9割程度が株式取引にネット証券を利用しています。
――既にシステムは出来上がっていると言えますか。
松井 当社含め、ネット証券業界においては、人がやっている作業をデジタルで置き換えるという部分はかなり進んでいると考えています。お客さまも成熟していて、オンライン取引をどうやったらいいかという疑問はもう持たれていないですし、デジタルでの取引に抵抗がある方もいらっしゃいません。当社のお客さまは2005年以前から利用してくださっている方、高齢の方も多いのですが、お客さまから対面で取引をしたいという要望は聞きません。
それでも必要な「人」、DX活用の先
――松井証券は顧客サポートに定評があります。
松井 現在は取引をサポートする面での需要がより出てきています。例えば、コールセンターでの電話を通じ、売買の相談に乗ってほしいという要望が寄せられるようになりました。
――デジタル化が一回りして人の需要に戻ったということでしょうか。
松井 いえ、一回りしてというのとは違いますね。オンライン取引がベースにあって、その上で人を介したコミュニケーションの需要があるということだと捉えています。例えば、株式取引における投資家の大きな悩みとして、『何を買う』『いつ買う』『いつ売る』があると思います。そうした疑問に答えるにあたって、刻々と変化する相場状況を踏まえた上で、お客さま自身の資産状況にも合わせたきめ細かなコミュニケーションが求められるようになっています。その部分は完全に機械に置き換えることが難しく、デジタルと人をうまく組み合わせて展開していくイメージです。
こうしたお客さまとのコミュニケーションがより求められていると考えるようになったのは、お客さまの声を蓄積し、分析してきたからです。加えて、DX活用がサービスの新たな付加価値の開発や提供につながっていくと思います。例えば、コールセンターにおいては、テキストマイニング技術の導入などによって、人による入力作業が削減された分、お客さまからの相談により力を入れられるようになりました。