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ライフスタイルの変化、規制緩和、フィンテックの台頭など、金融機関の経営環境は激変の一途。今やDXによる変革は待ったなしです。金融業界におけるDXキーパーソンへのインタビューにより、DX戦略の全体像から、データ活用、CX、カルチャー変革、デジタル人材育成まで、金融DXの最新の事例を取り上げます。
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DXの旗振り役を育てる「デジタルITマスター認定制度」
今年、前身の藤本ビルブローカー設立から120年の節目を迎えた大和証券グループ本社。大手証券の一角として長い歴史を持つ同社だが、伝統に縛られない柔軟な企業風土も併せ持つ。例えば、1999年に株式売買委託手数料が完全自由化して以降、インターネット専業証券が続々と誕生したが、大和証券ではそれより前の1996年、業界に先駆けてインターネットを利用した株式売買取引を開始しているのだ。
その同社が現在、力を入れているのがデジタルIT人材の育成である。
デジタルスキルの育成・向上のスキームは、高度専門スキルの習得が「上級」、部門別スキルの習得は「中級」、デジタルリテラシー習得が「初級」で計3層から構成されるのだが、大和証券グループ本社専務執行役で情報技術担当CIOを務める村瀬智之氏は、その3層構造についてこう解説する。
「分かりやすく動画配信に例えると、上級の高度専門スキルの習得はコンテンツ制作で、中級の部門別スキルの習得がそのコンテンツの配信。初級のデジタルリテラシー習得は、これまで紙ベースでコンテンツを扱ってきた人たちにデジタルに置き換えて動画を見てもらう。制作する人、配信する人、見る人それぞれで当然、持っているリテラシーや技術力が違います。そこで、上級に該当する人たちには『デジタルITマスター認定制度』、中級と初級には部門別専門課程と全社員必修課程をそれぞれ設けました」
まずはデジタルITマスター認定制度から見ていこう。同制度は、現在走っている3カ年の中期経営計画(2021年度から2023年度)期間中に200人の認定合格者を育成する計画で、3年前の2019年10月からスタートした。
2年間のプログラムで、前半は座学によるベーシックな研修、後半で習得した知識を基にデジタルの実地研修に移る。現在、4期生の募集がなされているが、第1期は特に反響も大きく、大和証券だけで約900人から応募があった。応募者には、まず始めに「デジタルリテラシー向上プログラム」を受講してもらい、修了した社員の中から選抜を通過した応募者のみ、次のステップである「デジタルIT活用力育成プログラム」に進むことができる。選抜通過者は、デジタルITをビジネスに活用する機会のある本部部署に異動し、実際のビジネス課題に即した実案件に取り組むことで、専門スキルの習得を図る。
2年間のプログラム修了後にスキル習熟度を評価して、最終的に34人をデジタルITマスター1期生として認定した。合格した人材の多くは、商品部門(エクイティや債券)、投資銀行部門、あるいはリスクマネジメントやコンプライアンスなどの本社部門や営業本部等に配置されている。
「この認定制度のコンセプトは、“DXの旗振り役”を現場に作っていくことにあります。日常のビジネスプロセスをDX化することで効率化を図る。蓄積されたデータを分析し、何かを発見してイノベーションを起こす。この2つが役割ですが、以前は、『ITはよく分からないから詳しい人にやってもらえばいい』とか『ITベンダーさん、提案してもらえませんか』と、いわば丸投げに近い事例も正直ありました。ですが、デジタル社会が進化していく今後は、自分たちでITマスターを育成し、ビジネスを熟知した人材が自身でDXを企画・推進する会社にしないといけません」(村瀬氏)