
1月20日に誕生した第2次トランプ政権。イーロン・マスク氏とビベック・ラマスワミ氏が率いる政府効率化省(DOGE)が立ち上げられ、小さな政府の実現を目指す方針が打ち出されている。
小さな政府ということは、規制の緩和をさまざまな分野で推し進めるということ。金融分野においてはどのような規制緩和が行われるのか、それによる日本への影響はどうなのか。ピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローに話を聞いた。
バーゼルⅢの規制緩和で利下げは止まる?
――第2次トランプ政権がスタートしました。小さな政府を旨とする共和党政権だけに金融分野における規制緩和も期待されています。具体的に、金融分野の何が緩和されると考えられますか。
大槻奈那氏(以下、敬称略) 主なものとしては、「バーゼルⅢ最終化規制の緩和や適用時期の延期」「商業用不動産のガイドライン柔軟化」「暗号資産規制の緩和」と見ています。
――そもそも「バーゼルⅢ」とは何ですか。
大槻 金融システムに対する不安が広がると、世の中の資金が目詰まりを起こします。卑近な例だと、バブル崩壊によって日本の銀行が多額の不良債権を抱えた結果、銀行が企業への融資を渋る貸し渋りや、融資期間の繰延に応じない貸し剥がしが行われ、実体経済に影響を及ぼしました。
こうしたことが起こらないよう、銀行はより多くの自己資本を持つことで、いつでも支払いに応じられる強固な財務体質を維持する必要があります。
日本のバブル崩壊による不良債権問題は、あくまでも日本国内の問題でしたが、国際業務を行う銀行で金融システムリスクが生じると、世界経済に広く悪影響が及びます。そこで、金融システムリスクが生じても銀行機能が損なわれないようにするため、世界各国の銀行が十分な自己資本を持つよう規制を決めるのが、主要国の中央銀行総裁によって構成されるバーゼル銀行監督委員会です。