味の素グループ 取締役 代表執行役副社長Chief Innovation Officer 研究開発統括の白神浩氏(撮影:榊水麗)

 味の素グループが培ってきたアミノ酸の知見から生まれた半導体材料「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」。今やABFは世界中の高性能半導体に使われており、同社の成長事業となった。さらには、このABF事業を“成功モデル”として他事業に生かすことで、会社全体の収益を大きく伸ばしたという。どのように事業を広げていったのか、技術トップを務める味の素グループ 取締役 代表執行役副社長Chief Innovation Officer 研究開発統括の白神浩氏に聞いた。(後編/全2回)

ABF初期の動きを「成功モデル」として他事業に

 味の素が1990年代に開発したABFは、半導体に用いられる層間絶縁材である。ベースになっているのは「エポキシ樹脂」という化合物の技術で、味の素グループ(以下、味の素)が持つアミノ酸の知見をきっかけに生まれた。

 前編で触れた通り、味の素には、創業時から蓄積してきたアミノ酸のノウハウがある。それらを活用して、社会課題の解決につなげる独自の科学的アプローチを「アミノサイエンス」と定義し、さまざまな領域で事業を展開している。

 ABFもその一つ。同社は早くから、アミノ酸の知見を基に機能性材料を開発しており、その中でも代表的な成功例となった。

 さらに同社では、この事業を“成功モデル”の型として、他の事業開発に応用しているという。始めたのは2010年頃から。こうした取り組みが業績を押し上げる一因となり、2011年からの10年間で同社全体の事業利益は約18%成長したという。

「型化し、他に応用する」とはどういうことか。