オリックス取締役兼代表執行役社長・グループCEOの井上亮氏(撮影:宮崎訓幸)

 1964年に設立し、今年60周年の節目を迎えたオリックスグループ。リース業を起点に、法人金融や事業投資、環境エネルギー、コンセッション、ほかにもグループで銀行、生保、自動車、ICT機器、不動産など広範囲にわたる事業会社を持ち、多種多様なビジネスを展開している。同社は昨年11月、新たにグループを横断するパーパスを制定したのだが、その狙いや背景はどんなものなのか。今後の成長戦略も含めてグループCEOを務める井上亮社長に話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年2月21日)※内容は掲載当時のもの

グループの事業拡大で必要性が増した「パーパス」の制定

――昨年11月に制定されたパーパスの議論は足かけ1年半をかけたそうですが、パーパス制定に至った背景は何ですか。

井上 亮/オリックス取締役兼代表執行役社長・グループCEO

1952年生まれ、東京都出身。1975年中央大学法学部卒。同年オリエント・リース(現オリックス)に入社。香港、ギリシャ、米国に駐在し、船舶や航空機のリース事業に従事するなど国際部門が長い。2005年に執行役に就任し、プロジェクト開発本部長を務める。2006年常務執行役、2008年海外事業統括本部長、2009年グローバル事業本部長、2010年取締役 兼 執行役副社長、2011年1月取締役 兼 代表執行役社長・グループCOO、2014年1月グループCo-CEOを歴任し、2014年6月からグループCEOに就任し、現在に至る。2023年よりオリックス・バファローズのオーナーを務める。

井上亮氏(以下敬称略) 我々は2000年頃から「EC21」という標語を掲げていました。これは21世紀における「Excellent Company」を目指すという意味ですが、四半世紀前のオリックスの企業規模は現在の約3分の1で、それ以降、手がける事業領域が格段に増え、企業や事業買収などでグループ会社も急速に増えていきました。そのため、いまの時代に合わなくなっていました。

 私は2011年に社長に就任しましたが、着任当初からいずれはグループで共有する価値観が必要だということを感じていました。なぜなら、たとえば我々の傘下に入っている海外のグループ会社は、株主はオリックスという点は認識していても、オリックスグループの一員だという意識が希薄だったからです。

 本来であればグループシナジーが生まれるはずなのに、海外グループ会社の有能な人材を日本の本社に抜擢しようと思っても、縦割り組織の弊害でグループの横連携がなかなか思うようにいかなかったのです。

――そこで海外拠点も含めた全社員が共有できる、クレドのようなものが必要だと考えたわけですね。

井上 ここ2、3年、異業種の大手企業も自社の存在意義や存在価値を再定義する動きが活発化したことから、当社でもパーパス制定のタイミングだと捉え、社内に具体的な検討をするよう指示しました。

 まず2022年6月に「ORIX Group Purpose Discovery Project」が始動しています。あくまでも次世代を担っていく社員のためのパーパスですので、私はプロジェクトに一切口を挟まないと決めていました。

 その後、約1年半にわたって国内外のグループ社員103名によるワークショップを中心に、オリックスグループらしさや創りたい未来、社会における存在意義などについて議論を重ねてもらいました。そして、最初に日本語版の案を出し、英語版も直訳でなく、海外の外国人社員たちにも腹落ちするような文言を考え、最後は複数の候補案について投票する方式を採りました。

 そのプロジェクトを通して出てきたエッセンスをもとに“オリックスグループの社会における存在意義(Purpose)”と“オリックスグループ社員が大切にする共通の価値観(Culture)”を明文化しました。前者は「変化に挑み、柔軟な発想と知の融合で、未来をひらくインパクトを」、後者が「多様性を力に変える」「挑戦をおもしろがる」「変化にチャンスを見出す」です。

 私は投票もしていませんが、決まったパーパス、価値観は私もいいなと思っていた案でしたので、社員も私と同じ感覚という点では安心しました。あとはパーパスが単なるお題目で終わることがないよう、役員も含めてオールオリックスでこれからどう浸透させていくかが大事だと思います。

資料提供/オリックス
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