写真右) 株式会社セブン銀行 コーポレート・トランスフォーメーション部コーポレートITデザイン室 室長 石原 健二 氏
写真左) 日本オラクル株式会社 クラウド・アプリケーション事業統括 常務執行役員 善浪 広行 氏

 コンビニエンスストア内のATMサービスをはじめユニークな金融サービスを提供するセブン銀行が企業改革を推進し投資も積極的に行っている。同社は業務効率化とデータドリブン経営の推進に向けて、ATMプラットフォーム事業の多角化を支える新会計システムを導入した。2024年8月21日〜22日にオンラインで開催された「金融イノベーションDays」では、セブン銀行の石原健二氏がこれらの取り組みを解説したのち、日本オラクルの善浪広行氏とともに、将来の展望やDXを支える人材や組織に関して対談形式で語り合った。ここではその内容を紹介する。

事業拡大に伴い、セブン銀行が直面していた課題とは

 セブン銀行は全国に2万7000台以上のATMを有し、提携金融機関数も670社以上に及ぶ。303万口座の決済機能のほか、クレジットカード354万枚、電子マネー『nanaco』8216万枚、スマホのみでATM取引などユニークな金融サービスを提供している(いずれも2024年3月現在)。

 対談の冒頭で日本オラクルの善浪氏が「セブン銀行の事業は順調に成長し、ビジネスのポートフォリオも拡大されています。ROA(総資産利益率)なども優れています。その中で、DX化や企業変革に取り組む理由はどこにあるのでしょうか」と尋ねた。

 それに対してセブン銀行の石原氏は「当社は2001年に設立され、20数年が経ちました。その間に、業務課題やシステム課題なども露呈してきており、その解決に向けた検討を始めていました」と語った。

 業務課題としては、人手による数字集めが煩雑であること、属人化・属部化が進みノウハウの継承に苦労していること、各種管理も過剰で社員の不満が高まっていることがあるという。また、システム課題では、個別システムがばらばらに存在するとともに複雑な構成のためカスタマイズ対応が必要で、社員の業務負担も増していることなどが紹介された。

 石原氏はさらに「銀行特有の現金主義から発生主義への転換のため、手作業による数字合わせを行うなど、属人化・属部化が進行していたことに加え、会計業務・システムが複雑になり、柔軟な変更が難しく、拡張性が乏しくなるなど構造上の課題も生まれていました」と話した。

図1:コーポレートシステム最適化に向けたこれまでの検討経緯 業務課題とシステム課題に加えて、会計業務・システム構造による課題も重なり、抜本的な改革の実行を決断。

 事業の拡大にともない非効率も拡大していたわけだ。

「課題解決に向けた取り組みが必須でした。しかし、会計領域は予算、発注、支払、決算などが連動しており、個別対応では根本課題解決が困難です。そこで、会計領域全体を俯瞰し、“コア”業務を設定し、課題解決に向けた会計基盤の設計を行いました。さらにコア領域にERPを導入し、業務面・システム面両方の改革を実行することにしました」(石原氏)。

システム管理のレベルアップによる抜本的な経営管理改革

 善浪氏は「そこで、コアERP導入を通じて、システムを見直し、抜本的な再構築を実施されたということですね」と続けた。

 石原氏は、「はい、システムで財務情報を一元管理し、業務標準化・内部統制強化を図ります。また、会計管理システムをレベルアップし、機能強化・基盤強化を行います。さらに、これらによりセブン銀行グループの経営管理向上を目指しています」と答えた。

 中でも注目すべきはコアERP導入による会計システム管理のレベルアップだろう。

「これまでは勘定系内に総勘定元帳が存在し、勘定系システムを中心に仕分情報が複雑に連携していました。コアERP導入後は、総勘定元帳は最新のSaaSであるERPで管理し、勘定系は現金主義である銀行取引のみを管理するようにしました。勘定系システムから総勘定元帳を切り離しコアERPに配置することで、シンプルな機能配置を実現しました。また、ERPは最新のSaaSシステムを利用することでシステムレジリエンスも向上しました」(石原氏)。

 善浪氏が「これらの変革を実現するERPに『Oracle Fusion Cloud ERP』を選択された理由はどこにあったのでしょうか」と尋ねたところ、石原氏は「まずSaaSで利用できることです。クラウドであればタイムリーに機能アップができ、業務の拡大にも対応できます。AIなどの新技術の導入も容易です。もともと、勘定系、基盤系、データベースなどの領域ではオラクルは定評がありますが、昨今は特に、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)などのサービスも拡充しており、基盤からアプリケーションまでフルネイティブでクラウドを利用できると感じました」と答えた。

 善浪氏は「将来のゴールを見据えながら、抜本的な変革を実現している好事例だと思います。大きなプロジェクトですが苦労はありませんでしたか」と尋ねた。

 石原氏はそれに対して「やはり人が大事です。このような社内の改革を進めるには現場レベルでは難しいという一方で現場を知っていないとなかなか進められません。そこで各部門で業務に精通したキーマンを巻き込んで、自分事としてプロジェクトに参加してもらえるように促しました。」と紹介した。

定性・定量の両面で効果を最大化

 コアERPの導入を進行するとともに、業務改革を実行することでどのような効果が見えてくるのだろうか。

 石原氏は「定性・定量の両面で大きな効果を見込んでいます」と答えた。具体的には、属人的な業務を標準化し、数字合わせのための業務対応を軽減することで事務作業の合理化を見込む。システム基盤もクラウド化により整備され、今後の新サービス展開に柔軟に対応できるようになり、BCPなどのレジリエンスも向上も期待。また、内部統制、法制度対応、子会社管理などのガバナンスも強化される見通しである。


 善浪氏は「石原さんは、コーポレート・トランスフォーメンション部に所属されていますが、まさに今回のプロジェクトはコーポレート・トランスフォーメンションを実現するものです。業務の姿、組織のあり方を刷新するという観点でも非常に意義深いと思います」と語った。

 石原氏は「確かに、各部の業務を大幅に変更した過去最大のプロジェクトであったことは確かです。ただし、ERP導入はゴールではなく、入口に過ぎません。SaaSのメリットを生かしながら、今後も継続的に業務の高度化、効率化を行っていきたいと考えています」と話した。

 善浪氏は「当社としても納入しておしまいではなく、カットオーバー後もご支援するケースが増えています。ぜひ一緒に伴走して企業のDX、イノベーションの実現をお手伝いしたいですね。御社のような事例が日本全体で増えることを願っています」と対談を結んだ。

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