2021年6月、東海東京フィナンシャル・ホールディングス(以下、東海東京FH)が証券業界で唯一「DX銘柄2021」に選定された背景には、フィンテック企業との協業を通じた、新たな金融サービス創造へのチャレンジがあった。同社はいかにして劇的な変貌を遂げたのか。ビジネス戦略としてのDX推進や将来の展望について、専務執行役員 デジタル戦略グループ担任の伴 雄司氏に聞いた。
※本コンテンツは、2022年1月26日に開催された、JBpress主催「第2回 金融DXフォーラム」Day1の特別講演Ⅱ「当社が目指す『東海東京デジタルワールド』の実現に向けて」の内容を採録したものです。
東海東京FHのデジタル戦略を支える2本の軸とは?
東海東京FHは、東海東京証券を中核とする総合金融グループだ。グループ全体の預かり資産は8兆円を超え、大手証券に次ぐ規模を誇る。
同社の大きな特徴の一つが、地方銀行との提携に先駆的に取り組んできたことだ。2007年の山口フィナンシャルグループとの合弁による新証券会社の設立を皮切りに、現在は7つの地方銀行グループとジョイントベンチャーを有するまでに規模を拡大。2021年には、宮城県に本社を置くフィデアホールディングスと金融商品仲介業務を開始し、地方銀行との提携ビジネスも新たなステージに入っている。
こうした取り組みの中で、同社は合弁証券会社への商品提供や営業員の出向だけでなく、リサーチや事務システム、教育など、必要な機能をあまねく提供する体制づくりを推進。その結果、後述するデジタル機能を含む多様なサービス提供が可能になり、現在はそれが「地銀サポートプログラム」として、ビジネスの新たな柱に成長してきている。
また、同社は証券会社として唯一、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX注目企業2020」「DX銘柄2021」に2年連続で選出されている。この成果を「外部企業と自社の開発を組み合わせた新たなビジネス創造のモデルが評価された」と、同社デジタル戦略グループの伴氏は語る。
「当社のDX戦略には、2つの軸があります。1つは、東海東京証券を中心に取り組んでいる、デジタル技術の有効活用による『生産性の向上』。もう1つは、主にフィンテックを取り入れた『新しいビジネスの創造』です」
まず生産性向上の面では、ペーパーレス化、RPA、電子ワークフローの導入などに取り組み、対2019年比で年間16万時間にも及ぶ削減を達成した。この成果は人件費の削減だけでなく、社員のワークライフバランスの改善にもつながっている。
営業面における生産性向上では、データベースマーケティングに取り組む。営業員各人の経験やノウハウへの依存度が大きい対面型の個人営業の質を大幅に改善し、今後はさらなる適切な人材アセスメントの実現を目指しているという。