金融DXの重要性が叫ばれて久しい。しかし、多くのフィンテック企業が現れてきた一方で、大きな変革を起こす難しさも明らかになってきている。課題をクリアし、チャンスをつかむためにどうあるべきか。東京大学金融教育研究センター・フィンテック研究フォーラム代表を務める東京大学 経済学研究科 教授の柳川範之氏に、これから金融業に起こる変化とビジネスチャンスを聞いた。

※本コンテンツは、2022年1月26日に開催されたJBpress主催「第2回 金融DXフォーラム」の基調講演「これからの金融DXとフィンテック」の内容を採録したものです。

金融業は根本的には情報産業、テックとの親和性が高い

「金融分野で大きなイノベーションが進んできたことは間違いない」と柳川氏は断言する。IT、デジタル化のインパクトを比較的早期に受けたのが金融業界だったわけだが、それはなぜか。

 柳川氏は、その理由を金融業の本質にあると見る。金融業は根本的には情報産業であり、企業に関する情報、個人に関する情報など、他で得難い情報を集めることで、仲介機関として成り立ってきた。そうした中、今、起きている金融分野のイノベーションはどのようなものなのか。

「少し前、いわゆるフィンテック初期はフィンテックベンチャーの新しい取り組みが注目され、既存の大手金融機関はフィンテックベンチャーを支援する立ち位置でした。しかし、今は金融業界全体がDXを重点的に進めるべきステージに至っています」

 金融業界全体が大きな変革の必要性にさらされているが、伝統的なビジネスを持つ大きな組織であればあるほど、DXを進めることは難しい。しかし、「難しいからこそ、チャンスも大きい」と柳川氏は語る。

「金融業のDXのチャンスは、大きく分けて2つあります。1つ目は、デジタル化によるコスト削減です。自動処理のプロセスが進むこと、また、かつてのような大きなシステム投資が必要なくなってくることから、相当、大きなコスト削減ができます。2つ目は、今までと異なった収益機会、収益構造が期待できること。これを実現できるか否かが、金融DX、フィンテックの最大のポイントです」

 今までにない収益構造をどのようにつくり出すのか。そして、どこに価値を求めていくのか。それを見つけることは容易ではないが、掘り起こすことができれば金融業としての可能性を大きく広げることができるという。