家電量販店の「ヤマダデンキ」などを展開するヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)は、他社とは一線を画す女性活躍推進施策を打っている。こうした取り組みを主導するのは、レジ打ち出身で同社初の女性取締役に就任した小暮めぐ美氏。同氏は過去の失敗を元に、女性が働きやすい環境の構築を目指しているという。どのような考え方で施策を立てているのか小暮氏に話を聞いた。
「数値目標ありき」ではうまくいかない
──小暮さんは2018年に取締役人材開発室長に就任し「女性の管理職比率引き上げ」に奔走されました。しかしその取り組みは失敗し、現在は別のアプローチを取ることで結果的に女性が管理職に就任するようになったとのことですが、これまでの経緯を教えてください。
小暮めぐ美氏(以下敬称略) 2018年当時は無理やり女性管理職をつくろうとしたのが失敗でした。現場の販売員を含め、次に管理職になれそうな社員を集め、研修などを実施しました。けれども結果的には「管理職にならされた」と考える女性が多く、早期に管理職から降りたいと申告する方が多く出てしまいました。本人たちに無理をさせてしまったことはもちろん、現場にも迷惑をかけたと思います。
その時に気づいたのは「女性管理職のロールモデルをつくると女性管理職が次々に誕生する」という理想論は現実的ではない、という事実です。結局、管理職だけに負担がいくような仕事現場では、誰も管理職を目指したがらないと実感したのです。
そこで「性別に関係なく、誰もが働きやすい職場を整備できれば、自然と女性管理職も生まれるだろう」と発想を転換させました。2021年から本格的に職場環境の改善に着手しました。まずは社員の本音を聞くべく、これまで内部で実施していた従業員満足度調査を外部のプロに依頼することにしました。あがってきた意見で多かったのは「残業が多い」「休みが取りづらい」というもの。長時間労働が常態化する小売業でよくある悩みでした。
こうした意見を受け、店舗運営のあり方を含めて残業時間削減の方法を検討し、連続休日取得可能な日数も3日から7日へ延長するなど、働き方の抜本的な改革に取り組みました。その結果、残業時間は大幅に減りました。こうした社員の負担を減らす取り組みが奏功し、2019年3月期に129人だった女性管理職は2023年3月期現在、194人まで増えました。
──「女性管理職の比率〇〇%を目指します」というような数字ありきの目標の立て方ではうまくいかない、ということですね。