ベルク(埼玉県鶴ヶ島市、原島一誠社長)というスーパーマーケットをご存じだろうか。スーパーマーケット業界では優良堅実企業として有名だが、その模範企業が今、大きく変貌している。今年7月末には高崎市に「クルベ」という企業名を逆さ読みした店舗名を持つディスカウントストアをオープンさせ、9月には従業員の身だしなみを大幅緩和した服装自由化を宣言、10月にはスタートアップベンチャーを支援するビジネスコンテスト開催を発表した。堅実な企業が多いスーパーマーケット業界で、「らしくない」動きをするベルクの意図を読み解く。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2023年11月1日)※内容は掲載当時のもの

シリーズ「日本を代表する2大コングロマーチャントの歴史に学ぶ」
【前編】コンビニのセブン&アイ、生活フルカバーのイオン、両者が違う道を歩んだ理由

【後編】セブン&アイとイオン、「五重苦の日本市場」で進める成長戦略はどこが違う?

シリーズ「なぜ、今、新フォーマット開発が必要なのか」
【前編】誕生するたびに企業が強くなる、ワークマンに業態開発の取り組みと成果を学ぶ
【後編】大創産業「スタンダードプロダクツ」に学ぶ、強みを生かした新業態の作り方

シリーズ「業界を代表するチェーンの強さの秘訣はどこにある」
売上高1兆円を突破、ウエルシアHDはなぜ業界1位の規模になれたのか
32年連続で増収、ベルクが「業界の優良堅実企業」であり続ける理由(本稿)


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 ベルクは埼玉県に本部を置くスーパーマーケットチェーンだ。埼玉県を中心に群馬県、栃木県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県に133店舗(2023年2月末時点)を展開する。2023年2月期(2022年度)の営業収益は3108億2600万円、営業利益は140億1800万円(いずれも連結ベース)。

 ベルクは1959年、埼玉県秩父市に設立した主婦の店秩父店という株式会社がスタートだ。1992年に企業イメージ向上のために現社名に変更したが、当時、8店舗・年商約200億円だった企業は、1994年に株式公開し現在では東証プライム市場に上場するまでなっている。

10年連続で既存店売上高が前年クリア

 セブン&アイ・ホールディングス、イオンやアマゾン・ジャパンなど含めた国内小売業の売上高ランキングでは52位のベルク。スーパーマーケット業界では16位で、同じ首都圏にスーパーマーケットを展開するヤオコー、サミット、ベイシアなどに次ぐ規模で、一見凡庸な企業に思える。
しかし、営業力を示す数値をみると、この見方は一変する。

 まず営業収益は32年連続の増収。これは安定した出店を重ね続けてきたことを意味する。

 そして、10年連続の既存店売上高前年超え。既存店売上とは新規オープン後13カ月以上が経過した店舗を対象にした店舗営業力安定の目安だ。これが前年を超えているということは、ベルクの各店舗が競合に強く、地域の顧客から高い支持を得ていることを示す。

 2022年度の既存店売上高前年比は101.8%で、その内訳は客数が100.3%、客単価が101.5%。コロナ下で買物客は来店回数を減らし、その分、1回当たりの買上点数を増やした(客単価増)が、その中でベルクは既存店の客数も増加させている。

 また、経営指標では2023年2月期の営業利益率が4.6%。スーパーマーケット業界では営業利益率2~3%で良好とされる。それはスーパーマーケットの主力商品である食品は価格競争の対象になりやすいことに加え、接客や商品化、品出し、精算などスーパーマーケットの店内業務は人に頼る部分が多く、低粗利、高経費の構造になりやすいからだ。