日本最大の100円ショップチェーンを展開する大創産業。その新フォーマット「Standard Products by DAISO」(スタンダードプロダクツ)は「100円の枠」を超えた新しいワンプライスショップの世界をつくろうとしている。キッチン、リビングなど扱うカテゴリーは「ダイソー」とほぼ同じでありながら、出店パターン、商品コンセプトには100円というワンプライスショップの枠を超えたチャレンジがみられる。今回はこの新業態がどのようにつくられたのかを学ぶ。

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【後編】大創産業「スタンダードプロダクツ」、強みを生かした新フォーマットの作り方(本稿)


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スタンダードプロダクツとはどのようなフォーマットか

 海外ブランドショップが並ぶ通称マロニエ通りに位置する「マロニエゲート銀座2」。かつてプランタン銀座という名前で営業していた百貨店は2017年に現在の施設名に改称した。その6階の約1000㎡のフロアをダイソー、THREEPPY(スリーピー)、Standard Products by DAISO(スタンダードプロダクツ)という大創産業の3フォーマットが占める。

 この商業施設には2020年、ファーストリテイリングが「UNIQLO TOKYO」をオープンし、1階から4階までの売場で構成される店舗をグローバル旗艦店と名付けた。大創産業もマロニエゲート銀座2に出店した3フォーマットが集まる店舗をグローバル旗艦店と位置付けている。

 大創産業の3つのフォーマットだが、ダイソーは皆さんご存じの「100円ショップ」。スリーピーは300円を中心価格帯とした女性向け雑貨を扱う店舗で2018年に登場した。スタンダードプロダクツは大創産業の最新フォーマットで、2021年に渋谷マークシティに1号店をオープンし、現在31都道府県で80店舗を展開する(2023年9月末時点)。

 「ちょっといいのが、ずっといい。」がスタンダードプロダクツのコンセプトだ。冒頭の写真を見て分かるように、店名ロゴ、木目とグレーに統一された内外装は、ピンクを基調としたダイソーとは対照的だ。商品構成は主に調理器具、食器、インテリア小物、文具が中心で、黒、グレー、ブラウンを中心としたカラー、コンパクトな収納を意識したデザインとなっている。POPなどの装飾物で価格よりも、商品についての開発ストーリーが紹介されている点も特徴になっている。

 価格ラインは300円を中心に500円、700円、1000円の4つ。売場全体で約1300アイテムをそろえ、店舗全体と商品構成を見ると、販売効率よりも空間重視を意識していることが伝わってくる。

伝統産業の悩みを解決し、生活者の欲求を満たす先に新フォーマットがあった

 スタンダードプロダクツはダイソーのブランディング戦略の一環でもある。

「ワンプライスショップではなく、バラエティストアと呼んでいる」と大創産業の矢野靖二社長は強調する。

 ダイソーは店舗全体のリブランディングを進めており、2018年に社長に就任した矢野氏はまず新店、改装店を中心に基幹フォーマットであるダイソーの看板を、ピンク基調の「DAISO」のロゴに切り替えていった。

 また、企業の社是を「世界中の人々の生活をワンプライスで豊かに変える~感動価格、感動品質~」と変えた。そこには祖業の「100円ショップ」にこだわりつつ、「100円の枠を超える」新たなバラエティストアをつくろうという意思が出ていた。そして、リブランディングを進めるダイソーの店舗に300円商品の導入を進める一方で、100円の枠を超えた新フォーマットの開発を進めたのがスタンダードプロダクツだ。

 大創産業は毎月約1200アイテムの新商品を開発するが、その中でもスタンダードプロダクツでは地域産業とのコラボレーション、環境配慮型の2点を重視する。

 例えば、間伐材を使った箸や食器、スマホスタンドなど実用的でありながら、森林保全や林業への貢献を意識した商品。また、金属加工で知られる新潟県燕市とのコラボレーションで開発したカトラリーなど国内製造業や職人との協働を通して地域産業への寄与にも取り組むのが基本的な考え方になっている。

 コロナ禍は、国内各地の伝統産業に深刻な影響をもたらし、その一方で在宅時間の増加は家庭でより快適な時間を過ごしたいという生活者の欲求を顕在化させた。スタンダードプロダクツの商品開発はこの両方の課題解決につながっている。

※19世紀初め、米国でフランク・ウールワースが開業した「The Great Five Cent Store(ザ・グレートファイブセントストア)」が起源。特徴は2点。①創業時は「5セント」のワンプライスであったこと(その後、1ドルの「ダラーストア」と呼ばれるようになる)。②ワンコイン商品が中心のため「消耗頻度の高い生活必需品の店」であったこと。