日本の流通小売業の歴史において重要な役割を果たしてきた総合スーパー(General Merchandise Store:以下、GMS)。これまでは食品が集客を担い、原価率の低い日用品・衣料品で収益性を高めるというビジネスモデルが一般的だったが、ユニクロやしまむらなど衣料専門店の台頭により、そのスキームが崩れてきている。
そんな中、GMSを運営しているイトーヨーカ堂が狙っているのは「食品強化」。集客の手段としての食品販売ではなく、食品スーパーに引けを取らない商品政策を実践することで、「地域のお客に選ばれるGMS」に生まれ変わろうとしているのだ。
特筆すべきは、イトーヨカドー全店で商品発注・食品製造計画にAIを活用することによって業務の効率化を図り、商品の品質も高めようという取り組みだ。イトーヨーカ堂が店舗変革の先に見据える「新しい個店」の姿とは? 「GMS再興」に向けたグランドデザインについて、取締役執行役員・IY販売事業部長の荒谷一徳氏に聞いた。
「7iD」でお客のニーズを明らかに
――GMSは復活できるのかというテーマが経済メディアでよく論じられます。イトーヨーカ堂はどんな戦略を立てていますか。
荒谷一徳氏(以下、敬称略) GMSという業態で店舗を運営する企業の中でも、それぞれの強みは異なります。我々の強みは以下2点にあると考えています。1)圧倒的な顧客データ量、(2)商圏のお客様に支持される「普段使い」としての食品の商品政策、です。
1点目に関しては、我々はセブン&アイグループの一員として「7iD」を構築しています。中でもグループ会社のセブン-イレブンと提携して、お客様の買い物行動を分析し、相互送客を行う取り組みも始めています。これにより、セブンとイトーヨーカドーでの買い物行動の違いは何か、どんな消費マインドを持っているかを分析し、特に30~40代の子育てファミリー層の支持を獲得しようとしているのです。
実は、我々はPOSデータを利用し始めた、流通小売業では最初の企業の一つです。POSデータは、マスデータの取得・分析には優れているのですが、一人一人のお客様のニーズまでは取り込めないという弱点があります。人口減時代はお客の胃袋の数も減っていきますから、それぞれのお客の「嗜好」をしっかりと分析し、ニーズにピタリと当てはまる商品を販売していかなければなりません。
7iDの強みは何と言っても個人の買い物履歴が残るところにあり、誰がどんな商品を買っているかまで分析可能です。今後は登録会員数を増やすところに注力していきます。