ビジネス環境の変化が急速に進む中、さまざまな産業で変革が求められようとしている。スーパーマーケットもその1つだ。かつてのように1カ所に店を構え、豊富な品揃えで集客する時代から、生活者の視点での新たなビジネスモデルの創出が必須になっている。その取り組みを早くから進めてきたのが、カスミだ。「スキャン&ゴー」など先進的な取り組みを積極的に進めている。代表取締役社長の山本慎一郎氏は、「デジタル化への取り組みは、サステナビリティ経営も実現する」と話す。
新たな業態展開を積極的に進め、事業を拡大
株式会社カスミは1961年、霞ストアーとして創業し茨城県石岡市で1号店を開店しました。2000年にはカスミグループ本社をつくば市に移転。2012年に移動スーパーサービスを開始しました。2020年には無人店舗「オフィス・スマートショップ」の運用も開始しています。地域別の店舗数は関東一円北関東に189店舗です。
店舗を業態別に見ると、フードスクエア、フードマーケットのスーパーマーケットのほか、低価格路線の「FOOD OFFストッカー」、小型店などを運営しています。2022年1月と2月には、新業態店「BLΛNDE(ブランデ)」を茨城県内に2店舗オープンしました。
2015年にはマルエツ、マックスバリュ関東と経営統合し、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)を設立しました。U.S.M.H設立の狙いは、ITや物流などについて個々の事業者に留まらない共通の仕掛けを開発しながらスーパーマーケットの経営品質を上げていくことです。U.S.M.Hは2022年3月現在、関東圏に522店舗を展開しています。
U.S.M.Hの社会的使命は「デジタルを基盤とした構造改革を推進し、『あらゆる人に食を届ける』をめざして協働と創発をくりかえし、地域社会に欠かすことのできない存在へ。」だと考えています。
「あらゆる人に食を届ける」という中には「Customer Job(お客さまのジョブ)」に寄り添う、あるいは「Well-being(お客さまの幸福な生活)」に寄り添う、「Environment(環境)」「Sustainable(サステナブル:持続可能性)」なども含まれます。これらを支える構造改革、あるいはオープンな関係性を作っていくことを目指します。そのベースにあるのはデジタル改革/新たなデジタル基盤です。そういう意味では、デジタルが可能にするサステナブルな経営とは、私たち自身が本来の使命として持っているものと考えていただけます。
サステナビリティ経営のための施策をデジタル化で推進
昨今、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まっています。当社グループにおいては、環境(E)に関する部分はカーボンニュートラル、資源循環・生物の多様性に取り組んでいます。
ソーシャル(S)の部分では「食の安全」「マーケティングラベリング」「食の調達と供給」、お客さまへの「食生活提案」「健康への貢献」「地域との共生」「顧客とのつながり」といったことのほかに、社内従業員の「働きがい」、働き手の「多様性と包摂」、さらに個々の「人権尊重」などの課題解決に向けて取り組みを進めています。
ガバナンス(G)では「リスクマネジメント」「プライバシー」が重要だと考えています。個々の課題について、デジタル化、すなわちDXにより実現していくことを考えています。お客さま、サプライチェーン、従業員など、さまざまな人たちをデジタルでどうつないでいくかが大きな課題です。
例えば、お客さまであれば、24時間いつでもつながれる状況をどう作っていくか。それは、まさにデジタルが成し遂げられる価値だと思いますし、価格以外の差別化につながると考えています。OMO(オンラインとオフラインの融合)なども、デジタルが可能とする活動です。プライバシー保護やデータセキュリティはまさにデジタルにほかなりません。