セブン&アイ・ホールディングスは2018年にグループ共通会員IDの「7iD」(セブンアイディ)を導入。グループのユーザー基盤としてセブン-イレブンやイトーヨーカドー、アカチャンホンポなど複数業態をまたいだこのデータを事業戦略に役立てている。同社のデジタルマーケティング部CRM推進兼カスタマーサービスシニアオフィサーである伏見一茂氏に、7iDのデータ活用の実態などについて聞いた。(インタビュー・構成/西岡克)
購買情報はグループ横断で単品レベルまで
――伏見さんの所属と担当されている業務は。
伏見 当社には事業会社のビジネスに向けた「グループDX推進本部」とシステム開発を手掛ける「グループDXソリューション本部」がありますが、私はグループDX推進本部に属しています。7iDを通じてデータを集めお客さまを深く知り、マーケティングも直接打つというCRM(顧客関係管理)戦略などを担当。ロイヤルティプログラムをグループ横断で運営し、お客さまの利用頻度やバスケットサイズを高めようとしています。
――7iDでは属性、購買、行動情報を一元管理されているそうですが、どのレベルまで把握できているのですか。
伏見 7iDとは1つ持つとグループの各事業会社間のさまざまなサービスがシームレスに移動可能な世界を目指し、リアル(アプリ)ともネットともつながる利便性の高いIDです。2018年からスタートし、現在グループ内連携サービスを拡大中です。
属性情報に関して、お客さまが最初にアプリ会員になるときは簡易情報のみで登録でき、加えてお客さまの利用範囲がネットに広がってくると、より深い情報をいただくことができます。
購買情報はグループ横断で属性情報と合わせて単品レベルまでいただけており、これは皆さん、意外に取れていないことも多いです。
行動情報は例えばサイトやアプリ内をどう回遊しているとか、グループ内を横断してどんな買物をされているのかが分かります。
これらの情報は各事業会社が分析することが可能です。本部だけではなく、現場にも少しずつ活用を広げている最中です。
業態を超えた買物の仕方や個店の商圏が分かる
――7iDのデータによって、今まで気付かなかったニーズなど新たな発見はありましたか。
伏見 例えばイトーヨーカドーでヨーグルトの「ベビーダノン」が売れている上位店ほどベビーグッズがよく売れ、アカチャンホンポとの併用率が高いことが分かりました。今まではその関連性が見えていませんでした。
――販促に活用し、成功した事例は。
伏見 販促ではグループ横断のデータから導き出した顧客嗜好スコアを使ってグループ横断で実施したところ、ターゲティングした対象者は各社で売り上げが上がりました。例えばヘルス&ビューティに関心がある人は業態を超えて同じ分野の商品を買うということが分かりました。
――個店のマーケットも見えてくる。
伏見 セブン-イレブンは全国にあるので、大型店のイトーヨーカドーの周りにセブン‐イレブンの店舗もあるケースも多いです。すると個店の商圏の中にどういう人たちがいて、どこへ買物に行って、何を買っているのかが見えて、商圏が本来持っているポテンシャルやニーズが分かります。
個店の品揃えは年月がたつと商圏に住む人たちのニーズとずれが発生することがあります。グループ横断の店の地図上にプロットすると、どんな属性のお客さまがどこから来ているのか、何を買ったのかが非常によく分かる。すると店の品揃えやレイアウトはこうあるべきではないかと見えてきます。ただ、それはあくまでも仮説要因ですから、お店が考え、実際に行動するためのヒントにしています。
――リアルとネットをまたいだ分析で分かったことは。
伏見 リアルとネットを併用するとお店の売上とカニバルと思いがちですが、実は利用の幅を広げるほど利用金額は高くなる。また、ネットを併用するとリアル店舗の売り上げも高まることが分かりました。これを数字で示すと、グループのシナジー(相乗効果)を追求し、リアルとデジタルを両方使うというメリットが理解できるようになり行動に変わります。これが7iDを推進する大きなエンジンになりました。