日本アクセスは、食品卸の大手企業であり、昨年度は三菱食品を抜いて食品卸での売上高トップとなった。雪印アクセスを前身としている企業であるため、低温商品の売り上げが約6割を占めているのが特徴。

 同社は、スーパーマーケットなどの小売企業から選ばれる卸であり続けるために、情報卸として、小売企業のIT活用を支援することに積極的である。そして、今月、経済産業省による「DX認定」を受けている。

 ここでは、日本アクセスが小売企業にどのようなDXの機能を提供しているかや、DXの基本方針や体制などを見てみたい。

【情報卸の機能】独自のダイナミックプライシング機能を提供

 日本アクセスは、顧客の小売企業のDX化を支援するため、システム開発子会社のD&Sソリューションズを推進の主体にして、情報卸としてのさまざまな機能を提供している。

 D&Sソリューションズは2020年、データ倉庫「RETAILSTUDIO」、ポイントバックによるダイナミックプライシング機能、LINEミニアプリを独自開発して、小売企業への提供を始めた。これらの機能を活用することで、小売企業は短期間かつ安価に販売促進等のためのサービス導入が可能となった。既に、京成ストア、静鉄ストア、阪急オアシス、丸久、いなげや等が採用している。

 それらの支援機能の中でダイナミックプライシング機能に注目してみたい。この機能は、売価を変更するのでなく、顧客ごとに購入した商品のポイントバックを行う(実質的に価格調整する)ことができるようにして、個別に販促ができる仕組みである。なお、この機能に関してのビジネスモデル特許「サーバ装置、付与ポイント決定方法、及びプログラム」(特許第6865880号)が日本アクセスから出願され(発明者はD&Sソリューションズの役員。知財管理上、親会社から特許出願されることはよくある)、既に特許登録されている。

 実店舗において、顧客ごとに異なる価格で商品を提供することは困難である。この特許は、対象商品を購入した顧客に付与するポイント数を、顧客ごとに決定可能にするという発明である。その仕組みを利用することで、顧客が安価と感じる価格(購入予想価格)で商品を実質的に購入できるようになるため、顧客満足度を向上させることができる、という効果が記述されている。

 なお、百貨店等では、優良顧客に対して常時ポイントアップする仕組みは既に存在する。しかし、同社のダイナミックプライシング機能は、商品ごとにポイントバックでき、さらに、優良顧客だけでなく、その商品を特に購入してほしい顧客に対してポイントバックすることができるため、従来にない効果的な販売促進が可能になると思われる。また、特定の顧客を対象にして、特定の商品に対しての紙のクーポンを配布する手法は従来から行われている。しかし、同社のダイナミックプライシング機能はネットを活用しているため、よりタイムリーな販売促進が期待できる。

 その他、小売企業に対してPOS分析のためのアプリ「POSMIL」も提供しており、小売企業の現場が販売促進の効果をいち早く検証することを支援できると考えられる。