菱食、明治屋商事、サンエス、フードサービスネットワークの4社が経営統合して2011年に発足した三菱食品。メーカーと小売業のハブ機能として食品流通卸売業を担い、日本の食の多様性に貢献するリーディングカンパニーの一つだ。
三菱食品が取引するメーカーは約6500社、小売企業は約3000社存在する。経営統合後にまず着手したのは、基幹システム「MILAI(ミライ)」を構築して流通の最適化を図ることだった。次世代事業統括兼CDOの山本将毅氏は、MILAIの背景についてこう語る。
「まずは4社が個別で使用してきたシステムを統合するため、2012年よりMILAIの構築に取り組んできた。日本の食品小売業は大手シェアが諸外国と比べて高くなく、業態にバリエーションがあることで、地域性や多様性があるのが強み。それまでのインフラから付加価値領域へ踏み込み、日本の豊かな食文化を守るための地域パートナーシップを構築したいと考えた。一方で三菱食品では年間12億件の取引があるため、取引のスピードや安定性を維持する必要もある。既存システムを併用しつつ2019年ごろから順次、MILAIを稼働し始め、その上でAIを使った需要予測などのデジタル機能を付加していった」
中でも、密結合から疎結合への転換にはこだわった。従来のシステムでは、一つのシステムを改修しようとすると他の関わる部分も全部、設計を見直す必要が生まれ、改修するのに多大な手間がかかっていた。だが、実態はその都度、変化する。システムのアーキテクチャを見直して一部入れ替えを可能とすることで、今後の選択肢が広がる仕組みを採用した。
現在は最終段階である小売業との個別取引に対応するEDI(電子データ交換)システムに着手しており、2025年完了予定で計画を進める。発注書や納品書といった各書類の様式や求められる情報は小売企業ごとに異なるため、手作業ではない自動化での対応を目指す。
2つの部署で連携して社内のデジタル活用を促進
三菱食品のIT・デジタル活用を推進する組織は主に2つ。MILAIや周辺システムに関連する仕事は、情報システム本部長を兼務するCIO(Chief Information Officer)が担当する。そして、デジタル戦略やマーケティング開発といった新しい需要を創造するのが、CDOである山本氏の仕事だ。
両部署は密接に関わってくるため、2週間に一度はCIOとCDOの山本氏の2人でミーティングを行う。お互いの部署の業務進捗を報告し合うほか、連携して取り組む協同プロジェクトについての確認、MILAIや周辺システムの改修内容、人事など多岐にわたる。情報共有や会社の進むべき方向性の確認、IT・デジタルの費用対効果の検証が目的だ。
「デジタル化することによる業務生産性の可視化や検証、現業の情報共有はもちろんだが、意外と人の話に時間を割くことが多い。『どの部署にいれば最も〇〇さんが活きるか』など、デジタル人財の配置転換や人事ローテーションについて話すことで、会社の方向性を考えている」