米国の「b8ta」、大丸松坂屋の「明日見世」に続き、「Meetz STORE」

 「売ることを主目的としない」という新しいビジネスモデルは定着していくのか。米国発の「b8ta(ベータ)を2020年8月に導入した丸井グループは店舗改革の柱として「売らない化」を急ピッチで進め、大丸松坂屋百貨店は2021年10月にショールーミングスペース「明日見世(あすみせ)」をオープン。店舗スタッフは来店者に商品を説明するだけでなく、そのやりとりの中から商品に興味を持った理由、商品に不満を感じた点などを収集し、メーカーにフィードバックする。それをもとにメーカーは商品・サービス、マーケティングなどの戦略を磨き直すという流れだ。

 そんな中、4月末に高島屋新宿店2階にお目見えした「Meetz STORE(ミーツストア)」。 「食・グルメ」「ジェンダーレスなライフスタイル」「ビューティー」「アート&クラフト」「エシカル」の5つのテーマを設けた。それぞれに精通したキュレーターが厳選したD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドを含め、国内外約60ブランドが並ぶ。選定基準は「海外でも興味を持ってもらいやすい商品」で、ギフト需要の取り込みに加え、ポストコロナにおけるインバウンドの回復に備える姿勢が見て取れる。

 店内に4台設置したAI(人工知能)搭載型カメラで、来店客の性別、年齢層、どの商品に興味を示したかなどの行動データを取得し、出店ブランドに提供する。これは先行するb8taなどと同じだが、店頭販売はしないものの、その場でアクセスもできる専用のオンラインストアで販売もする。決して「売らない店」ではないのが最大の特徴だ。

 商品横に表示したQRコードを読み取ると、ミーツストアのオンラインストアにアクセスし、商品を購入できる仕組み。オンライン・オフラインの相互連携によって、「顧客とギフトとの出会い」を演出するメディアと店舗を位置付ける。

 例えば、珪藻土の3倍の吸水量、6倍の吸水速度があるスティック型タオル。「スマートフォンや洋服に水滴がついてしまったときに便利なんです」と、ギフトコンシェルジュと呼ぶスタッフが説明をしながら、実演してくれる。そして顧客の要望に沿ったギフトを提案する。

 運営するのは高島屋とトランスコスモスの共同出資会社タカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマース(TTIC、シンガポール)。アジア市場での日本ブランドの販路開拓を支援する専門商社として2015年に設立。百貨店のグループ会社が手掛けるだけに、丁寧な接客とギフトが売り。来店客はその場で商品を持ち帰れない。ミーツストアの専用ECサイトで注文し、後日、商品が届く。ギフト包装やメッセージカードのオプションを選ぶこともできる。また、LINEやメールなどのアカウントを通じて、住所を知らない相手にもギフトを贈れる「ソーシャルギフト」にも対応する。

 商品在庫は、TTICが各ブランドから一定数の在庫を預かり、受注から発注までを手掛ける。店頭に在庫を持つ必要がなく、出店するブランドに商品の保管や出荷にかかるコストを負わせない。D2Cなど新興ブランドの出店に関するハードルを下げ、魅力ある新興ブランドを誘致・育成する狙いだ。