
慢性的な人手不足に加え、コロナ禍の中での需要急増で、小売各社のラストワンマイル(顧客にモノ・サービスが届く最後の接点あるいは物流サービス)戦略が新たな段階に入りつつある。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、ネットスーパーを店舗型から倉庫型へ舵を切り、ネットコンビニの対応店舗を大幅に拡大する。リアル店舗とネットの垣根がなくなっている中で、店舗を構えるだけでなく、お客の近くに小売り側から出向いていくことで顧客ニーズを広くすくい上げていく。そうした発想の転換がニューノーマル時代には求められる。
倉庫型への転換で人手不足に対応、コスト削減にも期待
「ネットスーパーは店舗の人員、店舗の在庫で仕組みを動かさなければいけないのが最大の弱点。仮に100のニーズがあっても店舗キャパが50、ドライバーのリソースが50しかなければ、100のニーズには応えられない」
セブン&アイHDの石橋誠一郎 常務執行役員グループ商品戦略本部長は、コロナ下で急増した実態を踏まえつつ、子会社であるイトーヨーカ堂のネットスーパー事業で大型拠点を新設する狙いを説明する。
2023年春に稼働する新横浜センター(横浜市都筑区)は、近隣の約30店舗の配送エリアおよび同センターから約30キロメートル圏内を配送エリアとする。大和ハウス工業が出資する大和ハウス港北特定目的会社と建物の1階から3階を賃貸契約(賃貸面積は約3万6456平方メートル)する。イトーヨーカ堂が首都圏で展開する店舗は約100店舗。その3分の1をカバー。それ以外の店は店舗型ネットスーパーを継続することになるが、いずれは逐次、センターを建設していくことで全てセンター出荷へと変えていく。
センター型へ転換する大きな理由の一つに人手不足対応がある。これまで30店舗それぞれでかかっていたネットスーパー用人員の削減ができる。さらにネットスーパー用スペースの賃料、それぞれの店で手配していた配送車両がいらなくなるコスト削減効果も期待。加えてネット顧客対応の新ジャンル商品開発などのマーチャンダイジングの幅を広げることも考えられる。
ダークストアの西日暮里店での状況をみると、コロナ禍で注文件数は想定以上に伸長し、その受け取り希望が午前中に集中している。このため、送時間帯ごとに配送料を変えるダイナミックプライシングを実験的に導入。ニーズがある時間帯は送料を高くして、安い送料へとお客を誘導し、1日の配送を平準化していこうと取り組んでいる。
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セブン-イレブンの「ネットコンビニ」は店舗利用とカニバらない
セブン&アイのラストワンマイルは戦略の柱のもう一つがネットコンビニだ。ネットコンビニは、スマホで注文すると、付近の店舗から指定の場所に商品が届く仕組みだ。2万店を超すセブン-イレブンの店舗網はお客との接点が圧倒的に多く、お客が欲しいものを欲しい時に届けられるインフラが既に整っている。
セブン-イレブンのネットコンビニは18年4月に北海道で開始した。その後、広島県、東京都に広げ、現在約550店で実験している。2021年度は1200店(期初計画では1000店舗)に拡大。さらに中期経営計画の最終年度の25年度には全国展開を見込む。
20年10月からリアルタイムでの在庫確認が可能になり、同12月からは配送時間を2時間から最短30分に短縮し、利便性の向上を図った。これによりリアル店舗との比較で買上点数は2.8倍、客単価は3.1倍となっている。
具体的には、電子マネー「nanaco」会員の店舗における平均的な買上点数は3.6点だが、ネットコンビニでは10.1点。客単価も2287円と、店舗での平均的な客単価737円を大幅に上回った。さらに、ネットコンビニは、店舗利用とカニバリを起こしていないことも分かった。
ネットコンビニを軸にグループ間での協業も進めている。現在、ネットコンビニはセブン-イレブンアプリの独自サイト、デニーズのデリバリーは出前館のサイトから注文する仕組みになっている。今後、この仕組みをグループに拡大する。井阪隆一社長は「頂いた注文データを物流プログラムのプラットフォームにおいて、AI(人工知能)を活用し車両、ドライバー、配送料、配送ルート、受取場所の最適化による効率的な運用の実現を目指す。この物流プログラムのプラットフォームをグループ全体で最大限に活用し、お客さまにセブン&アイの商品を最適な形でお届けしたいと考えている」と話す。

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グループ間での協業で、配送距離と車両台数を削減
配送コスト削減では、東京・品川エリアで実施した「ラストワンマイルDXプラットフォーム」の実験がある。これまでは傘下のコンビニやスーパーマーケット、外食、百貨店それぞれが配送網を持ち、個別に宅配しているが、今後は各社の自前の配送網をグループで共有化。各社の配送の利用状況などをまとめ、最も素早く運べる配送網を選択、宅配するシステムを作る構想だ。配送網の繁閑にあわせ、セブン-イレブン・ジャパンの宅配網でスーパーマーケットや百貨店の生鮮品を届けることなどを計画。実験結果では配送距離で最大40%、車両台数で最大45%の削減を得た。
デニーズが利用する宅配代行サービスは昼・夕食のピーク時間帯に配送員が確保しにくく、宅配に時間がかかる場合も多い。セブンの宅配網も使うことで配送の繁閑を平準化して、安定して宅配できる形にする。さらにそごう・西武の総菜などをグループの配送網を使い、宅配することにも取り組んだ。
DXプラットフォームの構築により、グループのさまざまな商品を1回の配送でまとめて受け取れるほか、プライベートブランド(PB)などグループ共通の商品であれば最寄りのコンビニから配達することも可能になる。
ネットコンビニは22年春から名称を北米に合わせて「7NOW」とする。「6~8月のセブンIDのデータによると、店頭とネットコンビニを併用したお客さまの中から、昨年ネットコンビニを利用していなかったお客さまを抽出して購入金額を調べたところ、ネットコンビニを利用しても、店頭購入額が落ちていないことが分かった。今後の成長の大きな要素になる」(井阪社長)とし、25年度にはグループ全体で約6000億円の売上規模を目指す。
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ライフコーポレーション、イオン、西友もラストワンマイルに注力
ラストワンマイルに力を入れるのはセブン&アイHDだけではない。アマゾンと組むライフコーポレーション、英オカドと提携するイオンなどもネットスーパー市場を攻略しようとしている。どの企業連合が「便利で、安く、早い」サービスを構築できるのか。数少ない成長市場を巡る争奪戦がいよいよ本格化する。
こうした中、「ネットスーパー日本一」を掲げるのが西友だ。今春、2025年12月期を最終年度とした中期経営計画を策定した。数値目標として、流通総額を現状の7850億円に1000億円上乗せし、営業利益を現状の2倍に引き上げる。戦略の柱はネットスーパー。専用倉庫の新設などを通じて販売エリアを広げ、事業売上高で1000億円、全社売上高に占める割合を2桁に伸ばす。
楽天西友ネットスーパーは、店頭出荷と倉庫出荷のハイブリッド型で展開している。今春に改装した「サニー春日店」にはネットスーパーの作業場を設置した。これまではネットスーパーの作業場を店舗後方に設置してきたが、今回、それを売場内にもってくることで、梱包などの出荷作業を来店客が見られるようにした。
22年初頭には大阪府で同社3カ所目となるネットスーパー専用倉庫を稼働させる。現在は横浜市と千葉県柏市の物流センターおよび店舗から商品を出荷しているが、関西に配送拠点を設置するのは初めて。大和ハウス工業が開発する地上4階建ての大型物流施設「DPL茨木」(延べ床面積約5万8000平方メートル)の全フロアを賃借する。常温・冷蔵・冷凍の3温度帯で商品を保管できるほか、搬送などの自動化設備を導入し、倉庫内の作業を効率化する。これにより、当日配送枠を拡充し、関西地域における供給能力を強化する。
その後も新設を検討する。商品を配送できる地域を増やし、より幅広いエリアをカバーする体制を構築する。株式の20%を所有する楽天グループとは、「楽天ポイント」を活用した新たな客層の開拓や情報システムの開発などでも連携する。
西友の株主であるKKRと楽天、ウォルマートは「それぞれの専門性を相互に活用しながらイノベーションとデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させ、西友が日本を代表するOMOリテーラー(オンラインとオフラインが融合した小売業)として躍進できるよう協業する」としている。
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