2018年に「IT小売業宣言」を発表し、ITを活用した新たな小売のカタチを模索するベイシアグループ。グループのデジタル化ではカインズが先行するが、ベイシアも2020年に、スターバックスコーヒー ジャパンでデジタル化を推進した亀山博史氏を招へいし、デジタル化を加速させた。そのときに新設したデジタル開発本部に社内から参画したのが戸枝智存氏だ。同氏に、ベイシアのデジタル化がどう進んできたのかを聞いた。

「亀山と2人だけでスタートしました。最初に行ったのが、デジタルの仕組み内製化の組織づくり。カインズのアドバイスを受けながらIT人材の採用を進め、数十人単位の組織をつくり上げました。そのメンバーでデジタル化のための体制固めをし、2022年からEコマース事業の責任者となりました」(戸枝氏)

 戸枝氏は築き上げたデジタル人材組織とともにベイシアのOMO(Online Merges with Offline:オフラインの実店舗とオンラインのECの融合)に取り組んだ。

 ベイシアのOMO戦略は、EC事業の3施策で行われている。3つの施策とは「アプリご予約」「自社の強みを活かしたEC」「SaaS型ネットスーパー」である。

「アプリご予約」が業務効率化と新たな需要開拓につながる

戸枝 智存/ベイシア マーケティング本部 e-コマース部 部長

1999年ベイシア入社。財務部・経営企画部など管理部門を10年ほど経験したのち、商品部・商品開発などを10年担当。2020年からデジタル開発本部・マーケティング統括本部にてデジタル内製化組織の立ち上げ支援。2022年からe-コマース部を担当。

 「アプリご予約」は2020年12月からサービスを開始した「ベイシアアプリ」(ポイント付与やさまざまな情報提供をする)を使って進められた。

「当社は100円の買い物でポイントを1ポイント付けるのなら、最初から1円安く売ればいいという考えを持っていたので、ポイントプログラムは行っていませんでした。しかし、OMOやデータ活用、一人一人のお客さまに寄り添ったサービスの提供には、アプリが必要であることから活用することにしました」(戸枝氏)

 そのアプリで多くの支持を集めている機能がアプリご予約。これはもともとクリスマスや節分、土用の丑の日など大きな催事の際の作業削減のために作った機能だった。以前は、クリスマスにクリスマスケーキを予約する場合、お客は紙のパンフレットを入手して申し込み欄に記入、その部分をはさみなどで切って店舗に持参し、申し込みをしていた。店舗ではそれを対面で受け付け、本部が全店舗の注文を集計し、発注をかけ、店舗に商品を納品していた。

 お客にとっても、店舗・本部にとっても手間のかかる仕組みだったが、「アプリご予約のおかげで、お客さまは店舗に行かずに24時間いつでも好きなときに注文できるようになりました。当社としてもそれまで人が行っていた発注から納品までの作業を省けるようになりました」(戸枝氏)