「店舗でもネットでも買える『ハイブリッドタイプの店舗』が主流となる時代が必ずくる」と話すのは、三重県鈴鹿市に本社を置くスーパーマーケット企業のスーパーサンシの常務取締役NetMarket事業本部長の高倉照和氏だ。コロナ禍を経て顧客のアクセス方法が大きく変化した昨今、ネットアクセスを持たない企業は今後苦境に立たされることは避けられない。「ネットの世界は先手必勝」と強調する同氏が、ネットスーパー業界を勝ち抜くための道筋を語った。

※本コンテンツは、2022年9月26日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「第9回リテールDXフォーラム」の特別講演4「風雲急なネットスーパー業界、来たる乱戦に勝つ為の成功方程式とは」の内容を採録したものです。

スーパーは地上戦から空中戦へ。制空権の制圧が競争を生き抜く鍵に

 ネット宅配プラットフォーム「JAPAN NetMarket」で、ネットスーパーの全国FC展開を行うスーパーサンシ。同社でNetMarket事業本部長を務める高倉照和氏は、「ネットマーケットの出現により、全国各地のスーパーが地元ネット商圏の制空権を獲得する未来が現実的になった」と語る。

 同氏いわく「約4万世帯の宅配エリアを対象にゼロから事業を始め、月商1000万を超えるのに要する期間はたったの1カ月」だというから驚きだ。

「生鮮食品も近いうちに必ずネット主体の攻防になります。もちろん店舗を磨き続けることも大切ですが、ネットアクセスを持っていない店舗は、大きな潜在顧客を取り逃していると言えます」

 振り返ること50年前、モータリゼーションの大波が小売業の「立地」を大きく変えた。この大波に乗った企業は、顧客のアクセス、立地条件の変化に高いレベルで対応することで、「地方の雄」に変貌した。現在、顧客の購買メインアクセスは自動車からスマートフォン(スマホ)に変わってきている。

 2021年の調査によれば、1人当たりの1日のスマホ試聴時間は4.8時間に上るという。それと比例するように減っているのが店舗の滞在時間だ。「スマホ社会においてネットアクセスを持たないということは、車社会で駐車場を持たないのと同じ」と語る高倉氏。地上戦からネット空中戦の時代を迎えた今、店舗の役割は戦艦から空母になってきたと言える。

「これからは店舗でもネットでも買える『ハイブリッドタイプの店舗』が主流になっていくと確信しています。『店舗に足を運ばなければ買えない』では、お客さまのアクセスの変化から取り残されてしまうでしょう。ネットアクセスを持たないが故のチャンスロスは思いの外大きいのです。人口が減少している地方における『買いに来られない層』は大きなフロンティアとして残っています」

 高倉氏はさらに、「やらないという選択肢もある。ただし周囲の大手は必ずやってくる」とつけ加える。

 中国では、生鮮食品の購入を考えた時に「スマホやアイコンを思い浮かべる」という。リアル店舗の消滅はないとはいえ、ネット宅配の比率はみるみる上がっていくだろう。やがてネットとリアルのハイブリッド時代を迎えれば、「制空権を取るか取られるか」の競争が繰り広げられる。立地のない売り上げの奪い合いによって、既存店の売り上げも大きく変わってくるのだ。