オセロの四隅を抑えた企業が勝ち残れる時代へ
ネットスーパーシェアの「本質」について、高倉氏は次のように述べる。
「ある商圏エリアで20パーセントのシェアを獲得しているとします。それは、逆にいえば80パーセントを逃している状況です。基本的にお客さまは自宅に近い店舗に足を運びます。自店舗から離れたエリアに居住する人は足を運んでくれません。ところがネットスーパーには立地の壁がなく、広く薄くシェアを取ることが可能です。各競合店舗から1パーセントしか取れなかったとしても、全体からくまなく取れば既存店の売り上げは必ず伸びるという仕組みです」
高倉氏は、ネット宅配成功のための4つのキーファクターを「オセロ」で例える。「オセロのように、取った取られたの乱戦になれば、絶対に取られない四隅を取った企業が勝ちます」。ここで言う「四隅」とは次の4つを指す。
①月会費制(サブスクリプション)
②自社配送
③ロッカー
④常に進化し続けるアプリ
高倉氏は「将来的にネットスーパーはサブスクリプション型(サブスク型)が勝ち残る」と話す。サブスク型で生鮮品を頻度よく買ってもらう形であれば、つわものである「生協」とも共存・共栄ができるのではないかという考えだ。また、ネットスーパーを本気でやるのであれば「自社配送以外は考えない方がよい」とも語る。「宅配の心臓部である配送を外部委託すると絶対にもうからない」と断言する。自社配送でコストを下げることが成功の鍵となるようだ。
さらに「ロッカーの設置で受け渡し効率は6倍になる」と高倉氏は続ける。ネット宅配においては、1時間に何件配送できるかが勝負になる。効率化を追求するのは必然ということだ。最後に「常に進化し続けるアプリが絶対に必要」だと高倉氏はまとめる。ネットスーパーにおいては「アプリ=売り場」となる。ローコストでありながらハイスペックなアプリが必要不可欠なのだという。
勝ち組になれるのは1社のみ。先取り・総取りを実現できる理由
高倉氏は「生鮮ネットスーパーだけは、同商圏内で1社だけが勝ち組になれる」と強調する。一社先取り・総取りが実現する理由は「1顧客1アカウントのみ」が必定であるからだ。
リアル店舗であれば好立地を先に押さえた企業が勝機を得るが、ネット宅配には立地という条件がない。好立地に該当するものが「有料会員」なのだ。「有料会員を先に押さえた企業が勝つ」のだ。
具体的に想像してみたい。とあるネットスーパーのサブスクに契約しているとする。月550円の会費を払い、庭には受け渡しのためのロッカーも設置した。その中で、競合他社のスーパーから「比較して買った方がお得なので、もう1社契約しませんか」と提案されたとする。果たして年間1万3200円を払い、ロッカーを庭に2つも設置し、2社を比較しながら肉やキャベツを購入するだろうか。リアル店舗では当たり前の購入プロセスも、ネットスーパーの場合は想像し難いはずだ。
「サブスクの指定席は1つしかありません。『後発であっても、店の力や資本の力でひっくり返せるだろう』という考えは幻想です。有力顧客をがっちりとつかめばシェアは増え続けます。だから『先取り・総取り』が可能なのです」
ここまでの話を聞くと、「後れを取った」と焦りを感じる人も少なくないかもしれない。しかし高倉氏は「焦る必要はない」と話す。
「地方では生鮮ネットスーパーに取り組んでいない県もまだまだ多いのが現状です。ただし、1社が先取り・総取りするのは間違いありませんから、ゆっくりと構えているのも考えものです。車社会を迎えて駐車場をつくった時と同様に、システムを構築するのにも時間、費用、準備が必要です。早めに手を打つのが得策でしょう」
同氏は「大手競合他社よりも先に地元ネット商圏を制圧すれば、来たるネットスーパー同士の戦いに圧勝できる」と力強く話す。実際に同社は、小売り最大手のイオンの膝元である三重県で、長年にわたりネットスーパーのシェアを確保している。
ネットの世界は先行有利。セカンドローカルにこそ勝機がある
多くの企業にJAPAN NetMarketが選ばれている理由を、高倉氏は次のように解説する。
まずは「必ず成功する店舗出荷型オペレーション」を採用している点だ。同社には40年の実績があり「マイナスリスクはほぼない」と語る。また、専門人員が不要なことも大きなメリットだろう。クラウド展開で、スーパー特有の複雑な販促作業まで全てを任せることが可能だという。先取り・総取りができる戦略のノウハウを得られ、常に進化するアプリを活用できることも大きい。
「私たちはネットスーパーだけで年間50億円以上を売っています。売り上げを増やしていくためには、年間で多額の投資が必要です。全国の志を同じくする企業と一緒に開発費を確保し、常に進化する最強のプラットフォームをつくり上げていこうと考えています」
最後に高倉氏は、最も大事な要素として「ローコストでの立ち上げ・運営」と挙げた。JAPAN NetMarketの初期費用は1回限りであり、2店舗目以降は一切不要だという。店舗数が増えたり、システム改善を行ったりしても追加費用は一切かからない仕組みで、安心して経営に専念できる環境が整うという。
「ネットの世界は圧倒的に先行有利です。繰り返しになりますが、既存の資産を活用しながら既存店の売り上げをアップするためには、地元ネット商圏の制空権を制圧することが必要不可欠だと考えます。特に地元生鮮スーパー会社はそのアドバンテージを生かすべきです。県内のセカンドローカル会社、サードローカル会社は、たとえ店舗売り上げで県内トップを取れなくても、ネット市場での県内トップ独占を狙うことができるでしょう。時代が変わればお客さまのアクセス方法も変わります。近い将来『生鮮食品はネット購入が当たり前』という時代が必ずやってきます」
バーチャルの売り上げがリアル店舗の売り上げを超える未来は、思っているよりもすぐそこまで来ている。ハイブリッド型店舗が主流になる時代を見据えて、今、種をまけば、将来、とてつもなく大きな収穫を得られるかもしれない。