日本を代表する小売チェーングループのセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)とイオン。この2つのグループはともに「イトーヨーカドー」と「イオン」という総合スーパーを祖業としながらも、異なる成長過程をたどっている。その違いをもたらした要因は何だったのか。

シリーズ「日本を代表する2大コングロマーチャントの歴史に学ぶ」
【前編】コンビニのセブン&アイ、生活フルカバーのイオン、両者が違う道を歩んだ理由(本稿)

【後編】セブン&アイとイオン、「五重苦の日本市場」で進める成長戦略はどこが違う?

シリーズ「なぜ今、業態でなくフォーマット開発が必要なのか」
できるたびに企業が強くなる、ワークマンのフォーマット開発の取り組みと成果
大創産業「スタンダードプロダクツ」、強みを生かした新フォーマットの作り方


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 最新の小売業ランキング(下の表)をみると、セブン&アイの営業収益は11兆8113億円。イオンは9兆1168億円。以下、3位はECのアマゾンジャパンの3兆1714億円で、4位がファーストリテイリングの2兆3011億円となっている。

 セブン&アイが営業収益で小売りチェーン1位になったのは2年連続で、昨年、10年ぶりにイオンを抜き返した。ただし、この2強の小売事業の中身は大きく異なるものになっている。

コングロマーチャントは2社が残った

 ここではセブン&アイとイオンを「コングロマーチャント」と呼ぶ。複合企業の「コングロマリット」と商人の「マーチャント」を合わせた造語だ。コングロマリットが複数の産業やマーケットを対象とした多角経営グループであるなら、コングロマーチャントは同じマーケットや顧客を対象に小売業、飲食業、サービス業など複数業態を傘下に持つ事業形態という意味だ。

 具体例としては、イトーヨーカ堂がセブン-イレブン、ダイエーがローソン、西友がファミリーマートといったように総合スーパーがコンビニ業態を手掛けたことが挙げられる。その後、イトーヨーカ堂はヨークベニマル、ヨークマートなどのスーパーマーケット業態、そごう・西武の百貨店業態をグループの傘下に持った。一方、ダイエーはホテル、プロ野球、外食と複数産業の多角化を進めた。前者がコングロマーチャント、後者がコングロマリットだ。コングロマーチャントは、同じ生活者を対象にさまざまなニーズに対し異なる業態の展開で相乗効果を狙う。コングロマリットは、複数事業を積み上げて、相乗効果を図りつつ、企業規模の拡大を図る。

 イオンは総合スーパー、マックスバリュ(スーパーマーケット)、ミニストップ(コンビニ)、専門店など複数の業態を展開した。また、これらの業態の受け皿となるショッピングセンターの開発を手掛ける。さらに金融業、カード事業まで広げている。これらはいずれも小売業の顧客へのサービス向上につながる事業に集中している。イオンはまさしくコングロマーチャントだ。

 かつて、総合スーパーを基幹事業とした小売りチェーンはこのコングロマーチャントになろうとした。ダイエーはその先陣だった。西友、マイカル、ユニーもそれを志向した。だが、いずれもそれらは行き詰まった。ダイエーとマイカルはイオンの子会社となり、西友はウォルマート傘下を経て、楽天、その後、米投資ファンドのKKRがその経営権を握る。ユニーはドン・キホーテのパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの傘下となった。

 その結果、コングロマーチャントはセブン&アイとイオンの2社が残った。