イオンモールは、「地域とともに“暮らしの未来”をつくる Life Design Developer」となることを経営理念とし、国内外で約200モールを展開するイオングループの中核企業である。
同社は、中期経営計画(2020~2022年度)の中で、中期3カ年成⻑施策実現の5つの経営課題の1つに「DXの推進」を挙げている。
※イオングループの「2021~2025年度 中期経営計画」でも、5つの成長戦略の中の1つに「デジタルシフトの加速と進化」が挙げられている。
そして、DXビジョンとして「“ヒトの想い”を中心としたDXの実現」を掲げ、DX推進により新たな価値提供に取り組んでいく姿勢を見せる(こうしたDXの進め方によって、同社は今年1月に経済産業省によるDX認定を受けている)。
今回は、同社がDXで目指す方向性、CX(顧客体験)向上策、スマートモール化、イオンモール共創プログラム、イオングループのネットスーパー展開との関係などについて見てみたい。
【DXで何を目指すのか】リアルのモールが提供する未来は?
同社は、DXビジョン「“ヒトの想い”を中心としたDXの実現」のために、あるべき姿を思い描き、それを形にする取り組みを進めようとしている。そのために実現すべき改革が、「経営理念・ビジョンの実践」「デジタル化社会対応」「マインドセット改革」。これらの改革によって新時代のニーズに対応した事業の開拓やオペレーションの確立で、DXを次なる成長へと結び付ける、という方向性を示す。
10月31日に公表されたイオンモールの統合報告書2022では、DX推進に関して次の3つの視点を挙げる。
・「Next Service for お客さま」:パーソナライズされたCXの実現など。
・「Next Solution for 出店者」:出店者の店舗運営をリアルとデジタルの両面でサポートするOMOプラットフォームなど。
・「Next Business for 地域」:自社リソースを活用した地域社会課題の解決など。
このように、モールの利用者以外に、出店者や地域に対するデジタル改革も含めてDXの展開を進めようとしている。DX推進によって新たな事業を創造したり、イオンモールを地域社会のプラットフォームとして社会課題解決に取り組み、新たな価値を提供していくことに積極的な姿勢を見せている。
【顧客体験の創造】モール内での顧客とのつながりを強化
同社の中期3カ年成⻑施策を実現するための5つの経営課題の1つに「CXの創造によるリアルモールの魅⼒の最⼤化」がある。デジタル以外の面も含まれるが、総合的なCX向上策によりイオンモールのファンを増やす狙いである。
デジタル面では、来店前と来店時の新たな価値を創出するためにイオンモールアプリを提供。今年2月、累計ダウンロード数は750万に達した。そのアプリによって、周辺道路の混雑状況や館内の混雑度が分かるため、混雑を避けた行動が可能となる。また、クーポン配信によって、来店したお客を店舗に送客することも可能である。加えて、顧客ごとのセグメントに適したタイムリーな情報発信などで顧客とのつながりを強化し、来店頻度の向上を目指している。
さらに、顧客接点の向上のため、モールのリアルの資産から得られる知見やデジタル技術を組み合わせ、顧客のライフステージや趣味嗜好に寄り添ったパーソナライズされた新しい価値を提案することで、顧客の利便性と満足度の向上を図る方針である。