出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 かつて内向き志向と言われていたNTTが変わりつつある。ここ数年で大胆な経営改革を次々と実行し、「守り」から「攻め」の姿勢に転じているのだ。通信業界の巨人が改革のギアチェンジを図る背景には何があるのか──。20年以上にわたりNTTを取材し、2024年12月に著書『NTTの叛乱 「宿命を背負う巨人」は生まれ変わるか』(日経BP)を出版した日経ビジネスLIVE編集長の堀越功氏に、NTTが変貌を遂げた舞台裏について聞いた。

守りから攻めに転じたNTTの「叛乱」

──著書『NTTの叛乱 「宿命を背負う巨人」は生まれ変わるか』では、保守的と言われ続けてきた巨大企業NTTが一転して次々と経営改革を進める姿に迫っています。著書のタイトル『NTTの叛乱(はんらん)』には、どのような意味を込めたのでしょうか。

堀越功氏(以下敬称略) 私は2004年に通信専門誌「日経コミュニケーション」(2017年休刊)の記者になって以来、約20年間、NTTという会社を見続けてきました。約20年前のNTTはとても内向き志向の会社でしたが、近年は印象ががらりと変わり、2023年12月に浮上した「NTT法見直し」の議論の際には「NTT法は結果的にいらなくなる」と主張して業界関係者に衝撃を与えました。

 日本の通信業界の秩序を保ってきたNTT法を「役割を終えたからなくす」と自ら発言したのですから、「これはまさに叛乱だ」と感じました。NTT法を変えることは、自らの存在意義そのものを大きく左右する可能性があるからです。

 NTTというと、典型的な“JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー=伝統的な日本企業)”であり「安定的で変化が少ない会社」というイメージが強いのではないでしょうか。一方で、莫大(ばくだい)な利益を上げれば「もうけすぎ」と批判を浴びて厳しい規制をかけられる恐れがあるため、かつては営業利益が国内首位になっても不振を装うような不思議な会社でもありました。

 それがガラリと変わったのは、現会長の澤田純氏がNTT持ち株会社の社長に就いた2018年からだと私は感じています。また、NTT法見直しの議論の際にNTT現社長・島田明氏が述べた「NTT法はおおむね役割を終えた」という発言は、同社が積極的に変わろうとする意思表示とも捉えられます。

 これまでNTTが「自らを規定する法律を変えたい」と主張したのは、私が取材してきた中でも初めてのことですから非常に驚きました。