出所:共同通信イメージズ(右:リコー創業者・市村清氏)
OA(オフィスオートメーション)メーカーから「デジタルサービスの会社」への変革を進めるリコー。その背景には、創業者・市村清氏から受け継がれてきた哲学があるという。2024年12月に著書『すべての"はたらく"に歓びを! リコー会長が辿り着いた「人を愛する経営」』(日経BP)を出版したリコー会長・山下良則氏に、変革に伴う体制変更の狙いや、同社が掲げる創業の精神にまつわるエピソードを聞いた。
「デジタルサービスの会社への変革」を宣言したリコーの狙い
――著書『すべての"はたらく"に歓びを! リコー会長が辿り着いた「人を愛する経営」』には、リコーが2020年3月に「デジタルサービスの会社への変革」を掲げ、組織体制を大きく変更したことに触れています。この背景には、どのような事業環境の変化があったのでしょうか。
山下良則氏(以下敬称略) リコーは元々、プリンティング機器を中心とするメーカーであり、複合機に加えてファクシミリ、ワードプロセッサ、スキャナなど、多様な製品を開発してきました。これらの製品によって人手による作業を機械化し、オフィスの生産性と効率を向上させることで、約50年にわたり顧客に寄り添ってきたのです。
中でも複合機は、グローバル展開によって十数年にわたり世界市場をリードしてきました。しかし、2008年のリーマン・ショックを契機に、北米や北欧でプリンティングの需要が落ち込み、状況は一変します。
私が社長に就任した2017年には、日本とアジアを除く地域で需要が減少し、リコーにはプリンティングに留まらない、新たなビジネスモデルの創出が求められました。
こうした変化の中でも、リコーが世界で初めてOAという言葉を提唱した1977年から変わっていないのが「機械にできることは機械に任せ、人はもっと創造的な仕事をしよう」という考えです。たとえプリンティングの需要が減少しても、はたらくの変革を通じ、はたらく人の創造力の発揮を支えることで、はたらく“歓び”を実感してられえるようになるはずです。
こうして2020年、「"はたらく"に歓びを」をリコーの2036年ビジョンとして掲げました。







